03 . 名を明かすもの
やっと名前登場。
もう序盤の方は本当にグダグダなんで、これから文章が向上するように祈らせて下さい。
"男"の静かなその言葉に朝貴は息を飲んだ。
顔は見えないが、彼はきっと何の感情も宿していない無表情なのだろう。
声からもそれが分かった。
朝貴はそのまま「はい」と短く返事をした。
すると、意を決したように眉を八の字に曲げた"男"がくるりと勢いよく振り向いて言った。
「お前、それ本当にそう思ってるんだよな?興味本意とかじゃないよな?」
「と、当然です。」
そう言うと、彼がすぐに表情を戻し、偏屈そうな顔をすると小さく呟いた。
朝貴はその言葉を聞き逃していなかった。
「俺の名はクトゥルー。大昔に海の底に封印された水の神だ。」
つぶやくように静かに動かされた唇は、確かにそう言っていた。
"クトゥルー"
確かに彼はそう言った。これが、彼の名前。
クトゥルーという名前に、朝貴は心当たりがあった。
「クトゥル―って…クトゥル―神話の?」
「お前、それを知っているのか?…それは流石に想定内の範疇ではなかった。」
朝貴は結構な読書家である。
なので、それなりに有名であるクトゥルー神話の小説群にも目を通したことがあった。
作品に登場する神話生物の中でも、クトゥルーは非常に有名だ。
だが、目の前にいるこの青年がかの名だたる神であるとは信じ難かった。
姿を一瞥してどこから見ても人間である。
普通ならそう思うのが当然であろう。
だが、先程の光景といい、彼の様子といい、彼自身が嘘を吐いてるようには見えなかった。
「ていうか…クトゥルーは存在したんだ…」
「お前…さては信じていないな?いや、俺からすれば信じない方が有益なんだが。」
「いっ、いいえ!信じます!」
クトゥルーの怪訝そうな目に朝貴は慌てて撤回する。
でも、彼があのクトゥルーだと思うと、変な感じがするのは予想外すぎたからだと思った。
「あ、私は神田朝貴といいます。」
「別にお前の名前など聞いていない。」
「あ、貴方のこと知ってしまったんだから、こっちも名前くらい言っておかないと失礼じゃないですか…!」
憮然とした態度でふてぶてしく言うクトゥルーに、朝貴は必死に訴えた。
どうも、この人は人間でいう尊大な性格のようだ。
そうしみじみと感じた。