02 . 問い質すもの
何か同じ語句を何回も使っていたらゲシュタルト崩壊しますね。タイトルといい。
「で、何故俺の本を噴水の中にぶん投げようと思ったのだ?」
先程と場所は変わらず噴水の前。
朝貴はベンチに腰を下ろして、顔を俯いていた。
"男"の手にはさっき朝貴が投げようとしていた本。
放り込まれる前に"男"が間一髪のところでキャッチしたため、本は無事だった。
だが、"男"は怒っていた。
前述のことからそれも当然だろうが、いかにも怒りを隠そうとしないその態度が朝貴を恐怖に陥れていた。
朝貴は観念して恐る恐る顔を上げる。
「だ、だって貴方があんな態度とるから…」
「は?」
「ひいいっ…すいませんなんでもないです…」
朝貴が小さく声を漏らすと、そこから俯瞰していた"男"が屈み、朝貴に詰め寄るように声のトーンを低くした。
これは相当怒っているようだ、朝貴はそう感じていた。
「なんか…無意識に体が動いて…そうでもしないとずっとあのままだっただろうし…」
「あのままで良かったはずだ。お前が俺に関わる必要性など全くない。
俺にもお前にも利益などないはずだ。」
"男"の冷徹な言葉に朝貴は冷や汗やらなんやら顔から出るものを噴き出している。
"男"の言葉には一句一句、説得力があり威圧感が込められていた。
反論でもすれば、すぐに捩じ伏せられそうな、そんな声だった。
「不快な気持にさせたのなら謝罪します。すみませんでした。
ですけど、あれは何だったんですか?
あの、噴水の摩訶不思議な水柱は…」
朝貴の言葉に、"男"の表情は突然膠着した。
擬音をつけるのなら、ぎくり、といった感じだろうか。
とても人間技とは言えない仕業に、彼は自分のことが彼女にバレると感じたのか。
「べ、別に何でもない。あれはただの…」
「もしかして手品師とか?」
「…………」
「不思議な力を持った超能力者?」
「…………」
「それとも、現代に甦った魔術師とか?」
「…………」
"男"は朝貴の問い掛けにすべて黙秘していた。
だが、額から汗をかいているなど、少なからず動揺しているようだった。
その異変に気づいた朝貴は"男"の顔をまじまじと見つめた。
「何かを隠しているんですよね?恐らく普通の人ではないことは分かるんですが…」
「……ふん。そんなことをお前が知って何の得がある。大体、見ず知らずの人間に正体など教えてなんの意味がある。」
見下すような冷たい笑みに朝貴は声を詰まらせた。
確かに、出会ってまもない人間に自分の正体を教える者など居ないだろう。
だが、なぜか彼には人間ではものを感じた。
アニメや漫画の影響なんかではないが、不思議とそう感じたのだ。
「知りたいです。あんなものを見てしまった以上、教えてもらえなければ私、夜も10時間しか眠れません。」
「………………それは寝すぎだと思うが。」
真剣な表情でボケをかます朝貴に、"男"は無表情でツッコミを入れると、その姿を見据えていた。
すると、"男"はその場から数歩あるいてぴたりと足を止めた。
「そんなに知りたいか。…俺のことが。」
【ここにきてまさかの登場人物紹介】
※しょうがねぇからきたねぇ文章見てってやるよという寛大な気持ちで閲覧して下さると嬉しいです。
神田朝貴 (かんだ あさき)
高校1年生。JKって言い方すると何か古臭い。
とにかく外見にも飾り気がなく余り今時の女子高生な雰囲気はない。
読書が趣味で純文学系でもそれ以外も何でも読む雑食。
まぁどこにでもいるような普通の高校生。
クトゥルフ神話は齧る程度に読んだことがあるくらい。
もしかしたら苦労人気質。