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コンビニ店員、お嬢様と出会う。
「加納くん。今日からこの子が新人で入るから指導よろしくね」
そう言ってユージン・マート菅田店のベテラン店長佐伯文男(四十二歳・独身)は一人の女の子を連れてきた。
ユージン・マートのロゴが入った水色ストライプの厚手のシャツに黒のスラックス。規定の制服に身を包んだその子は人見知りなのか恥ずかしげに俯いて上目遣いで言った。
「久遠寺アーリアよ。わたくしと言葉が交わせることひれ伏して神に感謝しなさい」
「………… 。……店長」
空耳だろうか。日常生活ではついぞ聞かないようなとんでもないセリフを聞いた気がする。思わず店長に視線を送るとああ、そう言えばといった感じでさらっと爆弾を落とされた。
「久遠寺さんはあの久遠寺財閥総帥の愛娘でね。どうしてもここでバイトしたいらしくて雇ったんだ。本人も普通に接して欲しいと言うし仲良くしてあげてね」
「わ、わたくしは別にそんなこと言ってないんだから!勘違いしないでくださる!?」
「…………」
……とりあえず一つ、突っ込んでいいだろうか。
なんでお嬢様がコンビニでアルバイト!?