魔術act.1
~序章~
邦国1級魔術師が着いたとき、辺りは『気』に立ちこめていた。
一般人が避難したオフィス街には、レベル3の『冷属』の魔獣が1匹。
魔術師とは、魔極理事会魔術連合支部に所属する魔術を退治するための専門機関である。
その中のトップに君臨するのは国内に13人しかいない邦国1級魔術師だ。魔獣と魔術師には、属性という物がある。『火』『冷』『地』『草』『雷』『水』『光』『闇』『補』『癒』の10属である。
「真っ昼間からレベル3かよ。だるいなぁ。怖いなぁ」と男は弱音を吐いた。
男の恰好はしわしわによれたシャツに、しわしわによれ膝に穴の空いたジーンズ姿に杖を持っている。
魔獣は攻撃するが、男はヒョイと躱した。
男は、杖を振り魔法陣を描く。
ちなみに男は『火属』『地属』の2属魔術師だ。
『気』が揺れた。
「滅されよ!炎気よ!我が身に従い、その存在を問いたださん 焰燃!」
杖は魔獣に向かって、振りおろされると魔獣は燃え上がり消滅した――――
「すげー。俺、魔術師になる」
俺、雷都 修はテレビを見ながら1人のようにつぶやくと、親友である桐峰 竜に
「無理かな」
と冷静かつ沈着に言い返した。
本当に根も葉もないやつだ。でも、竜は良いやつだ。俺は中学以前の記憶がない、両親もいない、親戚に育てられた。中学1年生、初日で浮いていた俺に唯一話しかけてくれたのは、竜だけだった。
「でも俺、魔力強いし、大丈夫!」
「修は魔力だけだよ。魔術もろくに使えないくせに。だいたい修、魔術師になるには中学から専門の中学に入らなければならないんだ。僕らは、もう中3だ。絶対、今、高校から入ろうとか考えたね。高校から入るにしてもエリート中のエリートしか入れないんだよ」
「わ、分かったよ。今日から特訓して魔術をちゃんと使えるようになり、高校から入れるよう頑張るわ」
「全然、分かってないね」
――彼らは、この時、まだ未来がどうなるかなど全く分かっていなかった――