魚くんと宝物
【即興小説トレーニング】時間切れ
お題:切ない交わり
制限時間:15分
魚くんは言いました。
「水がどこまでも静かに澄んでいるおかげで、僕は空を見ることができる」
それは魚くんの、大事な大事な宝物でした。
小さな湖では、アメンボ騎士団だけが波を作っていました。タニシ家族はしずしずと葦の根元を進み、ヤゴは水草の根元でうとうとしていたものでした。
もう、その宝物はありません。
「ゲロゲロ、なんてすばらしい場所なんだ」
ガマ夫人がさんが笑みを浮かべています。飛び跳ねる度に泥が舞いあがり濁らせます。
「でもなんか物足りないジョ。噂ほどではないジョ」
ドジョウ大夫は地中にもぐって、土をかきだしながら言います。
「あの、この湖では静かにしてもらえませんでしょうか」
魚くんは二人に、丁寧に注意を促します。
「あら、ごめんなさいゲロ」
「申し訳ないジョ」
二人は了承し、泥を舞わせるのを止めました。
でも魚くんは宝物を取り戻せませんでした。
「あの、この湖では静かにしてもらえませんでしょうか」
「アチャー、申し訳ないゴロ」
「マナーのなってないゲンゴロウで申し訳ないケロ」
「あの、この湖では……」
「気をつけますンボ」
「あの、この湖では……」
「ごめんなさいタル」
「あの……」
あの……!
せつなさの演出ができてない。
どうやればできたのか、ご意見いただけると嬉しいです。
『水魚の交わり』を元に演出したかったのですが、時間的に難しかったです。
アイディア自体がつまらないならそれまでですが(笑)