新歓と意外な発表【後編】
「ねぇ、神崎くん。」
もう酔ってる。どんなけ酒弱いんだよ、ってまだ飲めないおれが言うことでもないか。
「なんですか?」
「ほんっとうに彼女いらいんれしょーれ?」
うわっ呂律まわってない。
「はい、いないですよ。何回目ですか、この質問。」
そう、おれはこの人、谷本先輩が酔う前からずっと、同じ質問をされていた。はー、誰か、誰でもいい。助けてくれーーー。
結花の方を見ると、プイっとそっぽ向かれてしまった。
結花は結花で、
「林さん、彼氏居ないんならおれとかどう?絶対に大切にするんだけどなぁ。」
結花?
「あ、いえ遠慮しておきます。」
お、さすがだな。うん、うん。あんなチャラ男は、やめた方がいいよな。おれがそんなことを思っていると、
「あぁ~、かんらきくん、まーた林さんのこと見てるー。」
「見てないですよ。」
そんなに見てたのかな、おれ。それはそれで、恥ずかしい気もするが。
「わたしのことも見てよ。」
!!?
なにを言ってるんだこのひとは。上目遣いで、いきなり口説いてきた。お酒が入ってることもあり、その視線はかなり色っぽい。
お酒入ってても、こういうことはちゃんと返事しないとヤバイよな。
「あ、あの、おれは、、、、って、あれ?」
「ん~、むにゃむにゃ。」
寝てるよ。人騒がせだな。でも、まぁ助かったと言うべきかな。うん、助かった。
その頃、となりの席にいた松山は、
「ははっマジっすかー?へぇ、そりゃすごいっすねー。」
うまくやっていたようだ。
おれはと言うと、寝てしまった谷本先輩に上着を被せてあげ、箸を進めていた。
にしても、谷本先輩のあの顔、結構可愛かったりして。い、いや、いかんいかん。お酒飲んだ席だから偶然起こった事故とも言える。
それにおれには、好きな人いるしな。
ガヤガヤと騒ぎながらやっていると、部長が
「みんなー、飲んでるとこ悪いが聞いてくれー!」
何だ何だという、目で部長に視線が注がれた。まだなにかあるというのかなと、おれも話を聞くことにした。
「今回の映画制作に向けてのことなんだが、恋愛ものという案が多数だったため、恋愛ものに決定することにした。しいては、新入生にも役をやってもらうことになるが、意義はないか?」
ええ!?まじかよ。できないよそんなの。まずは、裏方とかでひっそりと、経験を積んでからだと思ったのに、大変なことになってしまった。
どんな役やらされるんだろ。楽なので、お願いしたい。
「役どころとしては神崎、お前主役なっ。」
「あ、はい、分かりました。」
・・・・・
・・・・・
「て、何言ってるんですか?部長!」
他の部員たちもザワザワ騒ぎ始めて、事態は急変している。そりゃそうだ。映画撮影、しかも主役を1年坊がやるって言うんだ。当然だよな。
「何ってお前、そのままの意味だよ。」
なんで、おれ?おかしい。何かがおかしいよな、この状況。おれなら通行人Aとかの方が全然いいでしょーが。
今、サークルに入ったのを後悔しているおれがいる。
「海くんすごいっ!頑張ってね!」
結花、めっちゃ目を輝かせているけど、おれからしたらいい迷惑だよ。
「く~っ、なんで海人なんだ。おれじゃなくて海人なんだよー。」
だまれ、松山。おれが聞きたい。
「が、頑張ってね。」
上園さんまで。
はぁ、やるしかないのか、おれは。演技なんて、小学生の学芸会以来でできねーよ。
「てなわけで、神崎ぃ、よろしく頼むぜ。」
部長、あなたを今まさに、恨みます。
「ちなみに、ヒロインとかは、間だ決まってないから。」
おれだけしか決まってないんかい!なんか疲れたな今日は寝よ。明日は、昼からだし。この発表を最後に飲み会は、終わった。




