第9話 木くらげ
夏休みになるやいなや、やたらとはしゃぎ始める人がいる。
遥架がそうだ。
私は暑いのが苦手だから、できれば外になんて出たくはないのだけど……。
まぁ、遥架がはしゃいでる姿を見るのは好きだから、仕方ないな~と思いつつも、こうしてついてきていたりするわけで。
「おーい、美羽~!」
嬉しそうに手を振る遥架に、苦笑いを浮かべながらも、手を振り返す。
どうでもいいけど、高校生にもなって木登りなんてするかなぁ……。
男っていくつになっても子供なのかも。
私は木陰に座って、木の枝の上につかまっている遥架を見上げていた。
それにしても、かなり登ったなぁ……。
もし落下したら、さすがにちょっと危険がありそう。
「遥架~、気をつけてね~!」
「大丈夫だよ~!」
……と、枝のところでなにか光ったような……?
「遥架! 足もと! 気をつけて!」
不安になった私は、思わず立ち上がって叫ぶ。
それが悪かったのかもしれない。
「わっ!」
バランスを崩し、遥架が真っ逆さまに落下してしまった。
「遥架~!!」
どさっ! と大きな音を立て、遥架は下の茂みに落ちた。
心配して駆け寄る私の顔は、きっと真っ青になっていただろう。
「遥架! 大丈夫っ!?」
「痛てててて……。ま、まぁ、大丈夫みたいだ」
「ふぅ~、よかった……」
でも……。
「なんだったんだろ。遥架の足もとに、一瞬なにか見えたよ?」
「う~ん、足が滑ったんだよな。なんか、ぬめっとしたのを踏んだような感じだったけど」
「それはぁ~、木くらげだよぉ~」
また出た!
結音ちゃん、今日はノースリーブのワンピースと麦わら帽子にアイスキャンディと、完璧に夏のいでたちだった。
「木くらげ……って、きのこ~?」
「それとは違ってぇ、生き物だよ~」
「えっ!?」
結音ちゃんいわく……どうやら、木の上にはたくさんの透明な生き物が生息しているらしい。
木くらげというのはそのうちの一種で、木の上を好むくらげのような透明生物なのだそうな。
「結音ちゃん、これって変なことだと思うけど、魔法でどうにかしないの?」
いつもどおりの答えしか返ってこないだろうな、と思いつつも問いかけてみると。
「透明だから気づいてないだけで~、世界各地に普通に生息してるんだよ~。だから変じゃないよぉ~!」
……世界中の皆様、木登りの際には、木くらげにくれぐれもご注意を……。




