第4話 でんでんむし
じとじと雨模様。
今日も今日とて、私は遥架と一緒に歩いていた。
傘を差して寄り添い歩く。
せっかくだから、傘を忘れたとか言ってあいあい傘でもすればよかったかな。
だけど私が毎日折りたたみの傘をカバンの中に常備しているのを、遥架も知ってるし……。
ぼんやり歩いていると、梅雨どきの風物詩が目に飛び込んできた。
紫色の花が鞠のようにまとまり、しっとり降り続く雨に濡れて、なんとなく寂しさを訴えかけてきているようにも感じられる。
そんなあじさいの葉っぱの上に、ぺったりと張りつく一匹の虫の姿を見つけた。
「あっ、かたつむりだな」
「かたつむりって、どうして、でんでん虫っていうのかなあ?」
「そりゃあ、電電虫っていうくらいだし、電気をバチバチ放つからだよ。怒らせると触角から小さな雷みたいに放電し始めるから、注意しろよ」
また遥架が適当なことを言い出す。
「あのねぇ、そんなわけないでしょ!」
「そうですよぉ~」
不意に新たな声が加わる。
神出鬼没な結音ちゃんが突然現れて、会話に加わってきたのだ。
最近はいつもこんな感じだから、すでに慣れてしまっているのだけど。
「まったく、電気だから電電虫だなんて、遥架はおかしいわよねぇ?」
「ううん~、そこは合ってるよぉ~。違ってるのは、触覚から電気を放つってところだよ~。実際には触角が避雷針みたいになって、雷の電気を吸収しちゃうの~」
そ……そうだったのか!
かたつむりって、奥が深い。
ん……? あれ? でも……。
「雷のエネルギーってすごく大きいんだよね? かたつむり、あんな小さな体だけど、雷なんて吸収しちゃって大丈夫なの?」
「まあ~、吸収できるようになってるってだけで~、まずありえないんだけどね~。でももし吸収したらどうなるかというとぉ~……」
結音ちゃんがそう言った途端、轟音が響く。
雷が鳴り始めたのだ。
うっ……嫌な予感……。
当然のごとく、その予感は当たってしまう。
ビカッ! ドォォォォォォーン!!
凄まじい閃光と爆音が瞬時に襲いかかってくる。
なんと、目の前のかたつむりに雷が落ちたのだ!
こんな至近距離だったのに私たちにはまったく被害がなかったのは、本当に結音ちゃんが言ったみたいに、かたつむりの触覚が避雷針の役割を果たしたということなのだろうか。
そして――。
「こうなるの~」
なぜか笑顔の結音ちゃんと、呆然とする私と遥架の目の前で――、
かたつむりは、見事に巨大化していた。
体長10mくらいの巨大なかたつむりが、町中に現れたという現状。
先日の巨大綿毛のときと同様、またもや野次馬が集まってくる。
すちゃっ!
結音ちゃんがどこからともなく取り出した杖を振りかざす。
「えい~!」
やけにのんびりとした動作と声で杖を振ると、その先端から針金みたいなものが伸び始めた。
針金の片方の端は、かたつむりにぷすっと刺さる。
同時に、もう片方の端は地面へと突き刺さる。
バチバチバチッ!
針金を伝って、かたつむりから地面へと電気が流れ始めた。
派手な音と光が針金を中心に放たれ、まるで花火のようにも思えるほど。
野次馬たちから大きな歓声が沸き上がる。
やがて、かたつむりはもとの大きさに戻った。
「つまり、針金がアース線の役割を果たしたと」
遥架が解説を入れる。
それにしても……。
「魔法、秘密でしょ?」
「あ……そっかぁ~。また忘れてたぁ~。てへっ♪」
結音ちゃんがどうして魔法を秘密にしなければならないのか、詳しく聞いてはいないから知らないけど。
はたして、こんな適当な感じでいいのだろうか……?




