第3話 たんぽぽの綿毛
暖かな春の日差しが降り注ぐ中、私はいつものように遥架と一緒に歩いていた。
ふと目の前を白い影がよぎる。
「綿毛だ」
学校帰りの野道。
たくさんのたんぽぽが綿毛を飛ばす。
もう、そんな季節になっていたんだ。
「綺麗……。こうやって、どこまでも遠く飛んでいくのね」
「まぁ、限界はあるだろうけどな。アメリカにまで飛んでいけたら、すごいけどなぁ」
「巨大な綿毛なら行けるかもしれないよ?」
とまあ、いつものごとく他愛もない話をしつつ歩いていると――。
「なんだ、あれ?」
遥架が不意に空を指差す。
そこには見慣れぬ巨大な物体――白くてもこもこした物体が……。
あれって、見るからに……。
「巨大綿毛!?」
そう。
まさにたんぽぽの綿毛、といったような見た目の、だけど直径は優に数十メートルはあろうかという物体が、上空にぷかぷかと浮かんでいたのだ!
なにやら、遥架がじと~っとした視線で私を睨んでくる。
「美羽があんなこと言うから……」
「そ……そんなわけないでしょ! ……たぶん……」
否定はしたものの、ちょっと自信がなくなってくる。
結音ちゃんが隣に引っ越してきてから、おかしな出来事を何度か目撃している。
そのせいで、私自身もおかしなことを引き寄せる体質になってしまった、というのも、ありえない話ではないのかもしれない。
って、なにバカなことを考えてんだか!
いつの間にか、周囲には野次馬もちらほらと集まってきていた。
どうやら、幻覚とかってわけでもなさそうだ。
と、そのとき。
聞き慣れた声が響き渡る。
「すみません~、通してください~!」
相変わらずのんびり口調の結音ちゃんが、人波をかき分け、巨大綿毛のほうに向かって駆けていった。
そして。
おもむろに取り出した、先端に星の飾りがついた杖みたいな物を振りかざす。
「えいっ!」
杖の先端からキラキラした光が放たれ、辺り一面に満点の星空のように広がっていく。
無数の光に包まれた巨大綿毛は、一瞬にして普通の大きさの綿毛に分裂し、そのまま空へと舞い上がっていった。
「おお~~~っ!」
歓声が上がる。
青空にきらめき映える、星の数ほどの真っ白い綿毛――。
それはとっても幻想的で、美しい光景だった。
でも――。
結音ちゃん、魔法のことって秘密じゃなかったの……?
家に戻った結音ちゃんにそう指摘してみたら、案の定、彼女は慌てふためいていた。




