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第7話:エディナさんのお仕事3

気が付けば一週間振り。

停滞していましたが復帰します!





「最初からだって?」


「おいおいマジかよ!」


「これまでの苦労はなんなのよー」


「優先参加権だけとかマジキチですねww」


 VR化に伴い、完全リセット。


 十年間走り続けた者にはあまりにもな事実。

 非難囂々だった。

 

 そんな中、開発元のSoldert社は一つの声明文を発表した。




 [あなた方のこれまでのプレイ時間は本当に無駄なのか?今までの経験が無価値だと何故言い切れるのか。プレイヤーの矜持とはそんなものなのか?]



 傲岸不遜。

 ここまで言い切る会社もいないであろう。

 この発言に大いにユーザーは発憤した。

 しかし、逆にヘビーユーザー達は大いに熱を高ぶらせる。

 

 「上等だ」


 そうまで言われて引き下がれる廃人(一流の猛者)達ではなかった。

 それが結果的にどのような事態に繋がるかを知らぬまま、

 虎視眈々と開始の刻を待っていた。

  



 









           〈第7話:エディナさんのお仕事3〉

               お店ができたよ

















 夕暮れに染まる街並。


 無事、大きな買い物は終わった。

 後は二日後、店の改装が始まるまで待つのみ。

 正直今はまだ、やる事がないので暇である。

 といっても細かく必要な物、工具類や生活用品などもまだなので残りの二日間はその辺りを中心に自分で店を探索してみようと思う。

 あと、勿論忘れてはいけない金属の材料も。


 セリス嬢に頼みっぱなしは情けない…………………………日本男児として!

 いや、まぁ、今は男じゃないんだけどね?

 決して、セリス嬢に頼むとファンシーなおへやになるだろう事態を嫌って一人で行くわけじゃナイヨ?

 ホントダヨ?



 



「うまー!」


「美味しいわ………………!」


 という訳で、御待ちかねの。

 今日の本題。ばんごはんである。

 ガルルガと呼ばれる竜魚を一頭丸々と使ったお造り。

 生で、刺身なんて物が食べられるとは思っていなかった。これは嬉しい。

 そして、その横にはレフトサンドの特大なハサミがほかほかと湯だっている。

 身から、濃厚そうなミソまでしっかり堪能するつもりだ。

 極めつけには、バックスタイガーと呼ばれる高級肉のステーキ。

 なかなかレアな食材らしく、此所のオーナーシェフに粘り強い交渉をした結果獲得した逸品である。

 もちろん、汁物や箸休めもあり、食後にはデザートも着いてくるという。

 どれも、上品さよりも素材本来の旨さを重視した取り合わせなのは、個人的な趣向であるのは否めない。

 一回の食事としてはかなりの出費だが、セリス嬢へのせめてものお礼である。



「久しぶりに食べたわ。ガルルガもバックスタイガーもあまり出て来ないのよね」


 満足気なセリス嬢。

 そう言ってもらえるとなによりだ。

 こちらとしても、イタチョーに交渉したかいがあるってもんだ。

 なにをやったかって?

 具体的にはイタチョーサンの前に立ってひたすら口の端から透明な液体を流し続けただけだよ?

 親切だよね、イタチョーさん!


「満腹満腹………………………………もぅ、俺、このままいっちゃってもいいよねー」


「今回は分からなくもないわね。ちょっと食べ過ぎちゃったけど、いいわー」


 大喰らいとはいえないセリス嬢も、この間よりかなり多く食べていたのだからその味がしれるというものである。

 しっとりと頂くのは嫌いじゃないし、そういうのも大いにアリだけどやっぱり食事はがっつりいきたいよね!

 

 









「ふう、いよいよか」


 そんなこんなで、残りの二日間は街の各所をまわって行った。

 途中、おいしそうな串焼きを食べたり、作業に使う道具を調達したり、おいしそうな果物を食べたり、日用品を謎袋に買って詰め込んだり、おいしそうな煮込み料理を食べたり、おいしそうな、……………………あれ?



 そして。

 今日はいよいよ、待ちに待ったお店の改装日だ。

 はやる気持ちを抑え、いつもの服に着替える。

 今日はシャツの糊も三倍増しに効いている。パリッパリだぜ!

 顔を洗う洗面台にて身だしなみチェック。

 今日も銀色の髪は鍛え上げられた筋肉、失礼。

 上質な鋼のごとき艶と、絹糸のようなすべらかさを誇っている。

 このさらさら感、正に世界がしっt………………………………。さて。

 ぴぴっと素早く前髪を整え、昨日買ってきた装飾の少ない普通の細長い布(リボンと人はいう)で後ろの髪を纏めて括る。

 ……………………………………………よし!初めてにしては上出来だ!

 ちょっと、不格好だけどこれも練習のうちだ。

 別に結び目がばらばらとか気にしてはいけない。

 


 準備を整え、いざ出陣!

 


 


 大分見慣れ始めてきた街並を眺めながら歩く。

 今日も今日とて街は活気に包まれている。

 時に、食べ物を商う露天を冷やかし、時に鍋からの香しいかおりに身を釣られつつ、目的地へと向かう。

 

 ちなみに、この身体の使い方も慣れてきてバランスの取り方をマスターした。

 故に、念願だった颯爽と風をきって歩く事が出来ているのだ。


「ふっ、…………………………ふふふっ」


 思わずしたり顔になってしまうのも仕方が無いと思う。

 これぞ仕事のデキる上司!といった感じなのだから。

 これで、女の子にもモテモテだぜ。わほーい。

 うむ、調子に乗りすぎていたようだ…………………俺、自重。

 

 中央広場を東に越え(大きさ的にかなり広いので誇張に非ず)、東地区へ。

 少し歩いた所で路地を右に曲がる。

 ちょっとした人だかりが出来ている場所へと足を進める。


「おはようございます」


「あ、おはよーございまーす!」


 見た目はボロい建物。

 そこに集まっていたのは勿論、今日改装を行って下さるバーンスタイン商会の皆様方である。


「早いですね、もう始まってるのか………………」


「大仕事ですからね。みんな気合い入っちゃいますよ!」


「それは、それは………………」


 頼もしいかぎりである。

 巷で有名な幽霊館なのに全然物怖じしていない。むしろ、

 幽霊も退散するぐらいの物を仕上げてやるぜ!

 と、現場のいかにもな親方風のおっさんが逆に張り切っていた。

 いや、彼女に逃げられると困るのですが。

 主に俺の癒し的な意味で。

 見た所、他の作業員達もそんなに気にしていないみたいだ。

 幽霊といっても、怖がってばかりではないらしい。

 まぁ、あの娘かわいいしね!あの娘かわいいしね!


「じゃ、私も作業に入りますね」


「了解。俺は、適当なところにいます」


 さて、工事が始まった。

 といっても、自分に出来る事などないのだが。

 取りあえず、今日働いてくれる方々に軽く挨拶とお礼を言ってまわった。

 みんな気さくに笑顔で応えてくれた。

 良いね、こういうの。実にイイ。

 

 それから先は、ひたすら待つだけである。

 途中ここはこうなるんだが大丈夫か、と聞かれるぐらいだ。

 うむ、問題ない。

 ないのだが、それにしても暇だった。

 木槌の音や、風の魔導を仕込んだ鉋をかけている音が響く。

 あ、鳥が飛んでる。

 平和だなあ…………………………。



「出来ましたー!!」


「おおー!」


 昼に休憩を挟みつつ、迅速かつ正確な仕事をしてもらった結果、陽が暮れない内に無事完成と相成った。

 凄まじい仕事っぷりだ。

 後は、家具や調度品、そして忘れてはいけない各種精霊石を取り付ければ完成である。

 

「どうもー、おっ、ぴったりのタイミングみたいやね」


 不意に、後ろから陽気な声が聞こえた。

 振り返るとそこには、開いているのかわからいくら糸眼が特徴的な若者がいた。

 背にはでかいリュックを背負っている。


「ちわー、アイクシルコラードからのお届け物でーす。あんさんがエディナんでよかったんかな?」


「エディナん?」


 どうやら渾名らしい。

 初対面の相手に随分フランクというか。

 呼ばれて嫌みがないところ、彼は誰にでもそうなのだろう。

 

「君がアイラさんの言ってた使いの人かな?」


「せや。ユーリックいいます、よろしゅうたのんますわ」


 どうやらアイクシルコラードから派遣された人物は彼の事らしい。

 実にタイミングの良い登場だ。

 そんな彼を見た第一印象はなんというか胡散くさい感じ漂う容姿をしてる割に、普通の青少年って感じだ。

 悪い奴ではなさそうで安心した。 


「こちらこそ、よろしく」


「はいな。バーンスタイン商会の皆さん方、もう始めても良いやろか?」


「はいはーい。勿論大丈夫ですよ!」


「ほな、入りまっか」


 そうして、作業を終えぽけーとしてた元気娘さんを案内人に俺達は建物の中へ入ってゆく。





「おぉ………………………………………………!!」


 良い仕事してますねー。

 正にそういった感想だった。

 剥がれ放題の壁は綺麗に塗り直され、床も張り替えられた。

 割れた窓もガラス板が嵌め込まれ、外からの光を霞む事無く建物内へ送っている。

 以前にはなかった扉が増え、そこから工房、住居スペースへと繋がっている。

 まだインテリアがないのでやたら広く見える店のフロアを抜け、先に工房へ。


 こちらも素晴らしい完成度だった。

 風通しの良さそうな作業場、大きさをたっぷり使った大窯。

 武器の試し振りが出来そうな程広い立派な工房。

 耐火、耐魔法加工を施したレンガ作りの此所は、俺の理想を体現したかのようなものだった。

 やばい。

 こんな所で剣が鍛てるなんて。

 知らず、身体がうずいてしまう。


「どうですか?私達の腕前は」


 少女が自信たっぷりに聞いてくる。

 誇らしげに胸を張るところから既に俺の答えは分かっているのだろう。 


「嗚呼、最高だよ……………………」

 

 それを聞いて、特大の笑みを咲かせる少女。

 俺もこんな笑顔が仕事終わりに出来る様になりたいものだと思う。 



「んじゃま、始めるでー」


 空気を読んで黙っていた青年、ユーリックが声を出し場が再起動する。

 窯の前に近づくとしゃがみ背負っていたバックを下し、中身をあさる。

 ごそごそと紅く両手で抱えられる程でかい精霊石を取り出したユーリックは、

 それを炉心の心臓部に丁寧に置く。

 そして、片膝立ちになり今までの飄々とした姿に似つかない程真剣に祈り始める。


「数多の精霊達よ、我ユーリック シュペルツィンの名の元に此所に誓う。我、力に驕らぬものなり。我等、精霊士は精霊の庇護下において全ての欺瞞なき信頼を寄せることを此所に誓う。今日の恵みに感謝を、アイクシルコラード アイラが高弟の一つユーリック シュペルツィンは精霊の助力を求めん」


 祈りを終えた瞬間、紅い精霊石はまばゆい光を発生させる。

 紅い精霊石を中心に粒子が飛び回り、発火したように炎が立ち上る。

 パチパチと時折光の粒が弾ける音がなる辺り、火床というよりかは暖炉みたいな感じだがこれはこれで味がある。


「ふう、おっけーや」


 暢気な表情に戻ったユーリックが大げさに額を拭うのを眼にして、思わず吹き出し隣の少女と笑い合った。

 その後は、同じ様に水や照明用の精霊石を各所に設置していく。

 二階は一階程広くはないが、一人で暮らすには余りあるぐらいの広さがある。

 なにしろ、キッチン、リビング、簡易ながら浴室、寝室それぞれ別の部屋に使ってもまだ部屋数が余るのだ。

 一つあの幽霊姫用の部屋でも作ろうかと一瞬本気で悩んでしまうくらいだった。

 






 


もう梅雨明けたかな?

お久しぶり、そしてこんばんわ、Keiです。


息抜きをしていたらいつの間にやら。

時間が過ぎるのは無情なものですね| ω・`)

取りあえず、立て込んでいた幼女、間違えた。

用事も終わりましたので更新再開します。



補足

VR化の優先参加権は十年間どのぐらいゲームにて栄誉を手にしたかが、

選考基準になっています。

ただし、目立った功績がなくても、

プレイ時間の長さも栄誉の一つに入ります。

十年間欠かさずログインし続けた 〉ランカートップクラス

なので一概にただ強いだけでも選ばれなかったり。





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