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第3話:光明と幻滅

ぎりぎりまで、悩んでました。





「巫山戯るな。貴様にくれてやるものはない」


「上等だ、こっちこそ願い下げだ!!」


 肩をいからせ立ち去る騎士風の男。


「けっ」


「全く、君たちは折り合いが悪いね」


 入れ替わりに。

 呆れたような笑みを顔に張り付けながら金髪碧眼の美少年が近づいてくる。

 

「お前か……………………、まだ当分必要なかったんじゃないのか?」


「やれやれ、用がなかったら来てはいけないのかい?」


「そんな事はないがよ……………………」


「別に彼は腕は悪くないよ。むしろ、一級品なのは君も知っているのだろう?」


「…………………………………………」


PK(プレイヤーキラー)も一種のプレイスタイルだよ」


「PKには俺は卸すことはしないんだよ」













            〈第3話:光明と幻滅〉














 意地と根性と気合いと土下座で、なんとか買った物の半分は自分で選んだものをねじ込むことが出来た。

 もちろん今現在着ているのはスーツモドキverデキル女である。

 間違ってもあんなふりふり地獄は相手がNPCだろうと見られるのは御免である。

 大量に買った服は、あの謎袋に入れてある。(入るのか心配だったけど入った。出せなくなる事はない、筈)

 セリス嬢に聞いてみたところ、この袋は魔導師に頼めば作ってもらえるものらしい。

 ただし、どれも容量には限りがあるらしく、ここまで入るのはかなりお高いとか。

 といっても超一流の冒険者の中には、容量制限の無いとか反則級の物を持っている事もあるようなので別に珍しいものではなかった。



「さて、此所が中央広場ね。此所から左側に武器防具を扱う店や、魔法の触媒やら、道具とか、主に冒険者達が使うものを扱う店が並んでいるわ。

 で、右側も似た様なものだけどあっちはダンジョンがあるから店はまばらね。

 したがって、急場で必要そうなものとか回復薬とかが主になるわ。

 で、我らがギルド本館がある南側は、主に食料品を扱う店、食事処や宿屋とかが多いわね。

 最後に王城もある北側は、城に近いところは貴族達が住んでいるわ。

 で、広場に近い方はその貴族達を相手にした商店が軒を連ねている。

 とはいっても厳密に区分けされてる訳じゃないから、基本的にはどこにいっても大抵の店はあるし、どこで店を開いても構わないわ」


 かなりの面積を誇る中央広場を見渡しながら説明するセリス嬢。

 どうやら、此所はこの街の中心地点らしい。

 なんでも、大昔に発生した魔物達の長、魔王を大闘士(勇者に非ず)が倒した由緒ある場所なのだとか。


「尤も、北側に店を持つ場合はそれなりの手順を踏む必要があるのよね」


「金、か」


「ざっくり言ってしまえばそうなるわ」


 つまり、北側で店を開けるには貴族連中に気に入られなければいけないらしい。

 勿論、面倒事は嫌いなほうなので北側は候補から外す。


「それと、北側を除けば店は空いているところを使って大丈夫よ。勿論色々内装を変えたり、設備を整えるにはお金がかかるけどね」


 それはありがたい。

 シャバ代(土地代)が掛からないのはかなり予算が浮く。


 話を纏めると。

 中央広場を境に北側(こっちに王城もある)に富裕層、東西に冒険用の店、南側に一般、食料店系。

 後は回りを囲うようにこの街の住民たちの家等が在る、と。

 そして空き屋を改装すれば店は開く事が出来る。

 大体の構造は把握出来た。


「こんなところかしら。何か気になる所はある?」


「いや、大丈夫。後は詳しく必要な物が必要になったら店の場所を教えてもらうよ」


 先程の出来事もあり、セリス嬢の方から砕けた口調になったのでこちらも敬語は使わず話す事になった。

 まさか、セリス嬢がこんなにアグレッシブな性格をしているとは思わなかった。

 さようなら清楚な美しい数時間前。こんにちは残酷な現実(いま)

 聞いた所彼女と年齢は同じようだったというのも理由に入る。


「分かったわ。じゃ、そろそろご飯を食べに行きましょうか」


 すっかり忘れていたが、ゲーム内でも腹は減る。

 全く、よく作ったものだと関心させられる。

 ほんとにどんな仕組みになっているのやら。





「うわぁ………………………………!」


 それは喜びだった

 神が人間に与えた原初の理

 それすなわち、「食」

 なぜ、食すのか?

 人類の歴史

 それは食事の歴史

 太古の時代より続く

 果ての無いエピローグ

 栄光の境地

 数多犠牲の代償

 そして知る

 人々は武器をすて

 ナイフとフォークを握る


「お前ら全部丸ごと食い尽くす……………………!」


 信ずる道

 そこに答えがある

 その名はそう、ステーキという

 いざゆかん、桃源郷へ


「いただきます」


 その前に挨拶挨拶。

 作ってくれた方へ感謝を忘れてはいけません。

 キチンとお祈りをした後、眼前の香ばしい匂いを立たせる物体を口へと運ぶ。


「うまうま!」


 溢れるジューシーな肉汁。

 たまらない食感。

 濃厚なソースもこれまたくどくなく味を更に引き立てる。

 口の中で繰り広げられるハーモニー。

 これは旨い、旨すぎる!


「あらあら」


 なんせ性格はあれですが美女との食事ですよ。

 しかも、見た事無い料理ですよ。

 さらにさらに、旨いときたら文句なしでしょう!

 あまりの美味しさにフォークがとどまることを知らない。

 嗚呼、こんな幸せあっていいのか………………。


「もくきゅもきゅ。うまうま。ぱくぱく……………………おかわり」


「はいはい、わかったから焦らないの」


 セリス嬢のこちらを見る眼が暖かいとかそんなのは気にしない。

 オール、ハイル、ミート!である。


「うーまーいぞー!」


 その後、食後のデザートまで美味しく頂いて、今日はお別れとなった。

 職員はギルド会館に個別の部屋があるんだとかで、会館に入って行った。


 それにしても、セリス嬢万々歳である。

 あの中央広場に銅像を建ててもいいぐらいだった。

 腹も満たされたし、もう少し街を見て回るかな。








 そんな良い夢旅気分で街を再び歩いていたのが裏目にでたのか、人とぶつかってしまった。


「とと、失礼」


「こちらこそ、怪我はない、………………………………か」


「お前は………………」


「……………………久し振りだな」


 何故か憮然となる騎士風の男。

 VR初の見知った顔との出会いは唐突で、かなり微妙なものだった。



「へー、殺戮騎士と呼ばれたお前が正式な騎士様とはねー」


 セリス嬢に最後に教えてもらったおすすめの宿屋。

 良心的な値段ながら中々のところだ。

 決して高級ではないが、掃除の行き届いた屋内は店主の人柄の良さがにじみ出ているようである。

 その一階、酒場兼食事をする為のテーブル席の一つに俺達は居た。

 

 こいつの名前は、カーグ。

 昔っから折り合いの着かない、犬猿の仲といったやつである。

 お連れの、部下らしい(カーグのくせに生意気な)方々は入り口の方で待機しているらしい。

 別に部下が居るからって凄いとか思ったりは全然まったくこれっぽっちもしない。

 くっ、こいついつの間にリア充になりやがった。爆散しろ。

 どうやら、最後の最後にして天は俺を見放したらしい。


「黙れ、これでも苦労したんだ」


「ふーん。それは良かった」


「お前な………………」


「冗談だ。そんなに怒るな、ここは俺が奢ってやるから」


「水しか飲んでいないのに恩を着せようとするな!」


 後に、二人が気軽に話し合う姿を遠くから見た兵達によりお固い隊長に女が出来た。と噂されることになる。

 そして、数日後のとある隊の訓練量が3倍になったらしいと門兵は背筋を寒くした。










「さて、一旦戻るか。お前もまだ此所にいるのか?」


 流石に今日はここまでにしておこう。

 明日もバイトがあるし。

 VR中に向こうの自分が体力回復しているのかもわからないし。

 取りあえず、初日にしては上々だろう。


「戻る、ね……………………。あぁ、そうか………………少し待て」


「なんだよ?っtてめぇ!」


 席を立った俺の腕をいきなり腕を掴んでくる。

 思ったより強い力に抗えず、そのまま席へと座らされる。


「………………………………いいか、よく聞いておけ。そして今直ぐ覚悟を決めろ」


「は?一体何を………………」


「お前はさっきログインしたばかりだな?」


「あ、ああ。そうだ」


 いきなりの事に苛立つもそれ以上に困惑した。

 眼前のやけに真剣な表情に戸惑いながらも頷く。

 

「単刀直入に聞く、お前はこの世界をどう思っている?」


「どうって、すげぇよな。此所まで再現するなんて、流石だよな」


「やはりか…………………………」


「なんだよ、言いたい事が有るならハッキリ言えよ」


 やけにもったいぶるというか、焦らしてくる?

 何か言いにくい事でもあるのだろうか。


「わかった」


「なにが」


「真面目に聞け。これは嘘でもなんでもないからな」


「だから、なんだってんだよ!」


「…………………………じゃない」


「………………………………?」


「此所、この世界はゲームじゃないと言ったんだ」


 沈黙。

 なにを言っているのか理解できなかった。

 眼前の男が口走った言葉があまりにも、あんまりな内容だった。

 次に、ジョークにしてはやけに寒いなと認識するとこみ上げる笑いが零れた。


「ぷっははは。いきなりなにを言い出すのかと思ったら!」


「………………………………」


「おいおい、お前もログインしたならわかってるだろ?いくらVRだからって」


「………………………………」


「………………………………」


「………………………………」


「なに、黙ってんだよ。そんな冗談………………」


「事実だ」


 変わらない、嘘にしては真面目すぎる表情に、俺の頭は一瞬の内に冷却される。


「おかしいとは思わなかったのか?やたら秘匿された情報、いきなり放り出される始まり方、コマンドウィンドウ等のゲームらしいシステムの無さ。味まで分かる完璧すぎる再現性」


「たしかに、…………………………って、まさか………………………………!!」



 まて、そうなると。


 否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否。理解不能。


 もしそのことばがほんとうだったら。


 このセカイはイッタイナンダ?



「……………………………………そのまさか、だ」


 まさか、そんな………………。


「嘘だろ、それじゃ、俺は」


「帰れない。今まで此所にきた連中と同じく、な」


 やや、遠慮がちに。しかし、はっきりと言い切るカーグ。

 その言葉に俺は、地面が崩れ落ちる感覚を味わった。 








 VR [Master of Artist]

 世界で最高の技術を使い開発されたゲーム。

 だが、この舞台にはとんでもない魔物が棲んでいた。

 そう、入り込んだ者を決して逃がす事のない牢獄という。


 

ふと、アイスキャンデーを自作しようと思いました。

こんばんわ、Keiです。さて、ジュースを買いにいこう。


ついに、念願のメインヒロイン登場です!やったね!

モブ臭ただようカーグ君ですが、彼はきっと大丈夫。

だって、メインヒロインだもの。


冗談はこのへんで。

真面目な話、この展開でいいのか迷ってました。

ですが物語を進めて行く上で、異世界の日常風景が主になるので、

批判の声も多く上がるであろう中、トリップという形にしました。

これからも。

おいでませ、ねとげの世界へ。を暖かく見守って頂ければ幸いです。


ではまた。

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