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第2話:始まりの街ガルガンディア

一日遅れの投稿です。

少し内容を濃くしてみました。




 システム確認………………[Master of Artist]

 基本ファイルの読み込み……………100%

 ユーザーリンクの状態……………………良好

 感覚機能、他全ての人体機能再現率……………98%

 誤差の範囲により修正プログラム起動…………修正完了

 設定されたキャラクター情報データの出力……………100%

 時刻設定、パーソナルデータの構成………………8980229319310293012391021923123912319203………………

 起動プログラムにエラーを検出………………………………………修正不可、アクセス権限が使用出来ません

 プログラムに不正なアクセスを確認、排………………………………………………

 ……………………………………………………………………………………………………………………………………

 ……………………………………………………………………………………………………………………………………















          〈第2話:始まりの街ガルガンディア〉
















「あの果物みたいなやつ美味そうだな………………。そういえば、お金って持ってるのか?」


 市場らしき場所に来た。

 あちらこちらで生の食材が並んでいる。

 果物、魚、肉、香草や調味料もうず高く積み上げられる様には圧倒される。

 流石に無一文はいくらなんでもないよな、と身体をまささぐってみる。

 表現が妙にいやらし……………………いやいや。

 俺は変態ではない、紳士という名の淑女なのだ!

 だめだ、変態っぽい…………………………………………。

 


「どこにあるかな、どこにあるかなっと。これかな?」


 気を取り直して。

 幸運にも文無しスタートではなさそうだった。

 それらしき巾着が見つかったので開けてみる、中身はまっくらだ。

 不自然な程暗い袋の中。

 これはもしやと手を突っ込んでみると案の定だった。

 どういった仕組みになっているのか、異次元空間みたいになっていて中にはお金が入っていた。


「………………んと、しめて1240,000ガットか。通貨は変わらずと…………………………ぉぉう」


 もう何度目かのびっくりだった。

 入っているお金の金額が理解出来た事もそうだが。VR化する前の、このゲームでの持ち金がそっくりそのまま入っていた。

 先程の果物が2ガット程だったのを鑑みるに、かなりの資産だという事がわかる。

 当分の生活には困らない。

 その上、これであれば直ぐにでも店を開く事が出来そうだ。

 これは、嬉しい誤算だった。 

 暫くは冒険者家業で資金集めを覚悟していただけにこの待遇はかなり良いといえるのではないだろうか。











「此所が、ギルドかー」


 あちこちから漂う誘惑(食べ物の匂い)に心揺られながら目当ての建物に辿り着く。

 他の建物より立派で、それでいて何処か堅牢そうなイメージを与える。

 自分の考えが間違っていなければ、ここがゲームの始まり、第一歩となる筈。

 実はVR [Master of Artist]

 前情報がびっくりする程無いのだ。

 幾つかの伏線となる言葉が、意味あり気に書かれているだけで目立った情報は一切なし。

 ただここまでの所、大分オーソドックスな展開になっているので大なり小なり、何かしらチュートリアルイベントが起きるであろうと踏んでいる。

 

 高まる期待を胸に、建物に入る。

 中は普通に綺麗だった。

 匂いも悪臭等一切せず、かなり清潔に保たれている。

 吹き抜けの高い天井。

 広々としたフロア。

 両脇には階段があり二階にいける様になっている。

 ぱっと見、テレビ番組に出てくる高級ホテルのロビーみたいな造りだ。

 フロアの中央、半分に仕切る様に横に長く伸びたカウンターでは、このギルドの職員らしき人々が冒険者から学者風の老人まで様々な者達の対応に右往左往している。

 

 その溢れる活気に少し気圧されながらも、空いているカウンターに近づく。

 受付をしていた女性は俺に気付くと、落ち着いた営業スマイルを浮かべる。


「いらっしゃいませ、なにか御用でしょうか?」


「失礼、チュートリアルってどこで受けられますか?」


「チュートリアル?えーと、新人さんの登録でしょうか?」


「あ、うん。そう、なるのかな?」


「はい、わかりました。では……………………」


 こちらの言葉に一瞬不思議そうな顔をした受付嬢は、納得したようになにやら分厚い冊子を取り出すと机の上にどさりと置く。

 我らの生活になじみ深い電話帳よりも分厚くでかい。歴史書ぐらいの大きさだ。

 そして、実用本意の飾り化のないインク瓶となんの動物のものか分からない羽根ペンを取り出し、書いてゆく。

 

「種族は人間族、戦闘技能は主に武具による近接戦、………………。はい、結構です。後は、………………」


「あの………………」


「はい?」


「冒険者?でなくて、商売を始めようと思っているのですが」


「ああ、そちらでしたか……………………でも、どちらにせよ登録しておいた方が便利ですよ?」


「そうなんですか?」


「えぇ。恐らくですがこの街は初めてですよね?」


「はい、つい先程来たばかりでして」


「でしたら尚更です。こちらで発行されるギルドカードは冒険者の方に限らず所謂、一種の身分証明になりますから」


「なるほど」


 どうやら此所では、ギルドは一つだけらしい。


「続けますね。後は、御名前ですね。こちらはご本人様に書いて頂く必要があります」


「はい」


 受付嬢から謎の羽根ペンを受け取り、ちょぼちょぼとインクをつけ名前を書いていく。文字等はネット時代と、どうやら変わっていないらしい。

 この [Master of Artist] では使われる言語は主に英語である。

 生粋の日本人で学業成績に乏しい俺でも、10年もプレイしていればそれなりに語学力は着いた。

 始めの頃の辞書片手に四苦八苦していた時の事を思い出して、少し吹き出してしまう。

 怪訝そうにこちらを見る受付嬢に、なんでもないと手を振り冊子を渡す。


「はい、確認致しました。では、最後ですね。こちらに、手を置いて下さい」


 そう言うと、冊子を収納いなにやら板状の物体を出す女性。


「こちらにて、最終登録とギルドカードの発行を行います。手を置いてください」


 言われるがままに、正方形の金属板の上に手を乗せる。

 ひんやりした感触と共に、置いた手のひらを中心に板に光の筋が走る。

 驚く間もなく光りはどんどん溢れ出てくる。

 やがて、筋は渦を巻くように太く雲のように煙状に漂う。

 徐々に丸く球体の形となった光はふわりと浮き上がり、板を離れ中空に。

 


 キンッ



「これがギルドカードになります」


 光の球体が完全に見えなくなるかという所で、小気味のよい金属音と共に光の粒子が飛び、一枚のカードが落ちて来る。

 慌てず、慣れたように空中のカードをキャッチした受付の女性は、それをこちらに差し出す。

 受け取ると、金属特有の冷たさと不思議なぬくもりがあった。


「おつかれさまでした。これにて、エディナ様のギルド登録を正式に終了致しました事を、ガルガンディア ギルド本館職員No.4726381 セリス ファティマの名において証明いたします」


 そして、やおら立ち上がり。


「エディナ様のこれからの日々に、精霊の癒しと加護がもたらされんことをギルド職員一同御祈りしております」


 深々とお辞儀をした。

 その姿に、言葉にならない感情が胸中を満たす。 

 VR [Master of Artist] その、おそらくチュートリアルであろうイベントを達成した瞬間であった。






「さてと。では、行きましょうか」


 チュートリアルも無事終わり。

 これからの事に思案していると、受付の女性がやおらに切り出した。


「は?あの、どこへ?」


「商売を始めるにも、さすがにその格好では怪しまれてしまうだけよ?」


「え、あっ」


 いかにも駆け出しです!って感じの布の服に革の軽鎧。

 言われてみれば、流石にこの格好のままでは拙いだろう。

 初心者新米冒険者ならいいが、この格好で商売はたしかにありえない。


「それに、まだこの街の事ぜんぜん分からないんじゃない?」


 それも図星だった。

 店を開こうにも、場所も道具もないのだ。

 唯一、金銭面での心配があまり無いのが救いだが。

 どれもこれも全て手探りなのだ。 


「折角の縁だし。この後時間あれば街を案内してあげるけど、どうする?」


 正直な所、この話は渡りに船だった。


「あー、うん。よろしくお願いします」


「はい。お願いされました。じゃ、ちょっと入り口の辺りで待っててね」

 

 ぱちりとキレイなウインクをして作り物(営業用)でない笑顔を咲かせる受付の女性。

 ー仕事(クエスト)ー 等と聞くのは野暮なのだろう。

 その姿はとてもNPCには見えない。

 そもそも、俺にはNPCとプレイヤーを見分ける方法すら分からないのだから。


 NPCかプレイヤーか区別はつかないけど。

 何で初対面の人間に、とか思惑云々は置いておいて。

 善意、好意にはきちんと感謝をすべし。

 幼い頃に祖父にならった言葉である。

 いずれにせよ、ここは純粋に好意に甘えようではないか。

 







「お待たせしました。それじゃ行きましょうか」


「はいよ、っと」


 すっかり日も暮れ、夜の帳が降りてきたが街はまだまだ繁盛中。

 むしろここからが柿入れ時な酒場らしき店や、ひとときの華を売る店等。

 街が休みを取る事はない。

 

 そんな街中を受付のお姉さん、セリス嬢と一緒に歩を進める。

 事前に商売を始める事は言ってあるので、一通りの施設と物の価値やログアウトに必要かもしれない宿の確保等、詳しくはもちろん自分で探すにしても。

 簡単にだが一通り案内してくれる彼女には感謝をしてもしきれない。


「さて、先ずはその服からね………………」


「お手柔らかに………………」


 そんな中、先ず入ったのは服飾店。

 施設うんぬんの事を聞こうとしたが、巡りながら教えてくれるようだし、こっちは何も知らないのだ。

 おとなしく着いていけという事なのだろう。

 

 鼻唄を歌いながら上機嫌に店内を回っていくセリス嬢。

 その姿に苦笑しつつ、折角来た事だし自分もどんな服があるのか見て回ることに。



「却下」


「なにゆえ」


 が、開始早々。

 俺が見ていた服を、隣から覗き込んだセリス嬢から駄目出しを受けた。


「だいたい、なによそれは」


「なにって、服ですが…………」


 ごくシンプルなワイシャツとスラックスの様な服。

 この、多分凛々しい容姿に合わせてみたのだが。

 駄目ですか?なんつーかこう男装の麗人!って感じでイイかと思ったのですが。

 これだと、着てて個人的にも安心設計だし。

 そもそも戦闘しないし、服装はなんでも問題ない筈。


「だめよそんな地味なの!もっと、可愛らしいのを着なきゃ!!」


 近い近い。

 お顔が近いですよセリス嬢。

 鼻息で吹き飛ばされそうです。

 というか、キャラ変わってませんか?

 気のせいですかそうですか。


「こっちに来なさい!いくつか良いの見繕っておいたから」


「悪い予感しかしないのですが………………」


 出来るのならば拒否したい。

 背筋が寒くなるのを感じたものの。

 一応見るだけは。見るだけはと思い、付いていったのだが。


「うわ………………………………」


 見せられたのは、凄かった。

 こんな薄いので大丈夫なのかってぐらいの、ひらひらしたすかぁと。

 もちろん、ふりるは完全そーびで。

 上も、やたら凝ったデザインのふわっとした感じのやつ。

 いや、服自体はごてごてしたものの割にセンスが良いものだとは分かるんですが。

 これ、俺が着るの?場違いじゃね? 

 というか、着方がわからんのですよ。


「ほら、早く着てみせて」


「いや、こんなの着たことないですよ………………」


 渡された服をぴらぴら泳がせていると痺れを切らしたのか、セリス嬢は俺を更衣室らしき布で仕切られたスペースに押し込むと自分も入った。


「仕方ないわね、私が着替えさせてあげるから、ほら」


「へっ?あっ、な、なにするだぁ!?」


「ええい、暴れない!大人しく剥かれなさい!あら、やっぱりいいスタイルしてるわね………………」


 そこからなにがあったのかは、聞かないで頂ければさいわいですますた。

 一つだけ言うなら、VRまじすげぇ。

 







 その後暫くは着せ替え人形として、店員さんも巻き込んだ動かない石像in俺 feat.じょしのふくにかけるじょーねつ byセリス嬢以下女性店員のみなみなさま方。

 という図式が成立してしまっていた事を後述しておく。




蚊取り線香はじめました。

こんばんわKeiです。


セリス嬢は勿論思惑(着せ替え人形になりそう)があってエディナさんに近づきました。

彼女は乙女という名の淑女です(`・ω・´)

今後もエディナさん同様に素晴らしい暴走っぷりを発揮します。


ではまた次回に。


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