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第1話:ログイン

やっと、ファンタジー成分が出てきます。





 

        幾多の枝葉は今、土へと還り一つの芽を新たに吹く。

        次なる舞台は完全なる異界。

        栄光も富も飢えも。

        全てを掴むも、全てを満たすも自分次第。

        新たなる旅路への準備は整った。

        大いなる高みへと、再び。

 

 


           VR [Master of Artist]  

              Soldert社













           〈第1話:ログイン〉













「んぅ………………………………」


 夢を見ていた。

 見渡す限りの草原。

 色とりどりの草花。

 鍛え上げた肉厚な筋肉。

 吹き抜ける様な青空。

 その青空の元、少量の雲が楽しげに空を泳いでいる。

 草原の中心には無駄なもの一つ纏わぬ、凛々しくも年月を感じる存在が。

 たくわえた髭は美しく、なでつけた頭髪は光を反射しきらきらつやつやぬるぬると、


「そんなんありえんわぁぁああああああああ!!」


 後の俺の黒歴史一ページ目を飾る素敵で最悪な目覚め。

 風見 剛太郎こと、エディナが VR[Master of Artist] で初めて言葉を発した瞬間であった。







「此所は………………てそうか俺確かログインしたんだったな」


 眼前には広大な湖が広がっている。

 水は透き通るように青く澄んでいた。

 周りは木々に覆われ、まさにお伽噺(ファンタジー)といった風景が広がっていた。 


「おおぅ、ファンタジーっぽい。本当に俺は来たんだな………………」


 なんともいえない感慨に浸る。

 よし、先ず始めにする事は。


「自分の姿確認だな」


 やっぱり気になるよね。

 うむ、と頷き歩みを進める。

 が、何故かよたよたとした歩きになってしまった。

 なんか重心が前の方に傾いているというか、これは要訓練だな。歩くだけでこれじゃ話にならん。

 さてさて、いったいどうなっているかな?


「うぉお…………………………」


 一言でいうなら予想以上だった。

 少々鋭めの眼、きりっとした眉、シャープだが女性らしい柔らかさを保った面立ち。

 薄めのそれでいてふっくらした唇、眼の下の涙ぼくろがセクシーさを演出。

 なかなかに自己主張する二つの膨らみ、腰回りはきゅっと締まったかのように細い。

 身長は現実での自分とさほど、すみません嘘つきました。自分より高めの170センチ半ば程。

 さらりと、流れる銀絹のような腰までの銀髪。

 初期装備らしい、革の鎧を身に纏ったとんでもない美女。

 俺が一周間念入りに創り上げたキャラ。

 エディナが水面に映っていた。


「はっ…………………………!い、いかんいかん!」


 自分で自分の姿に見入るなんてナルシストもいいとこだ。

 俺自重、俺自重と自分を諌める。 


「それにしても良く出来たもんだな」

 

 ふと、湖の水面に手をつけてみる。春先なのか少しきりりとした冷たさが指先を伝わっていく。

 時折、吹く風も髪をさわさわと揺らしていく感触も。

 日向の暖かさも。

 現実の世界とまるで変わらない。

 此所が俺達の、俺の夢の先(新天地)。 


「はぁ、………………………………凄げぇなあ」


 









「まぁ口調は変えなくてもいい、よな?」


 一頻り、完成度の高さに驚嘆した後。

 いつまでも此所にいてもしょうがないので、この場を離れることに。

 さて、身体は女性になっているのだが。

 どの道これはゲームだ。交流があるのは同じプレイヤーだろう。

 別に俺はナリキリといわれるロール(演技派)プレイヤーではないので口調にこだわる事もない。

 まぁ、それにこの容姿なら男の口調でもそんなに違和感はないだろう。

 声自体はなんというか、自分ではいまいちわからない。

 ただ、やはり女のそれなんだろうとは思う。そう信じたい。


「う、むっ。こうか?違うな……………………」

 

 そんな訳で、おそらくどこかに在るであろう始まりの街へと俺は歩きだした。

 歩行訓練をかねながら、えっちらおっちらと。 





「何処だ、どこに在る街よ……………………」


 のだが。

 意気揚々と歩き出して一時間。

 早くも迷子全開だった。

 

「くっ、こういうのは案内板とかあるんじゃないのか」


 湖を出て、道らしき開けた大地を慣れない身体をせっせと動かしてきたのだが。

 一行に街らしき物の存在が見当たらない。

 こう道の片隅とかに標識みたいなのが、


「おっ、?なんだあるじゃないか」


 在った。

 ぽつねん、と木の立て看板が草むらの脇に立っていた。 

 

「なになに、………………始まりの街「ガルガンディア」。この先、30アルト」


 ちなみに、1アルトは100メートルである。


「ふむふむ、あと30アルトか」


 俺が今居るのは湖から20アルトくらいだから…………。

 開始地点から始まりの街まで2時間半くらいか、なかなかに遠いな。

 まぁ、いきなりモンスターの巣とかじゃないし。

 周りに他のプレイヤーがいない所をみるに、ランダムに配置されるような中ではそこそこなのだろう。

 何事も前向きが一番だ。


「さて、あと半分頑張って歩くとしますか」


 ちなみに。

 標識の矢印が湖の方を示していた事に気付いたのは10アルト程歩いた時の事。

 急いで引き返したのは言うまでもない。



 






「やっと着いたぜ、ガルガンディア……………………!」


 なんだかんだと、合計3時間程を費やし到着したのは陽も茜色に染まる、夕暮れ時だった。

 尤も、よたよた歩きからとてとて歩きにまでランクアップしたのでそう悪いものでもなかったのかもしれない。

 華麗なるスタスタ歩きまでの道はもうすぐだと自分を励ましながら街の風景に眼を移す。


「おー、これが始まりの街。なんというか、うん。ファンタジーだな!」


 感想にしては些か語彙が足りない発言をしてしまう。

 例えるなら中世風といえばいいのか。

 中央に一本道が伸び、奥にはやたら大きい城らしきものが見える。

 左右には料理店や武器屋、わけの分からない食材らしきものを売っている商店等が軒先で声を張り上げ客引きをしている姿が眼に映る。

 通りを歩くNPCも、家族連れや、冒険者なのか軽装の鎧に身を包んだ男女がなにやら店のカウンターで交渉していたり、はたまたこんな時間から酔っぱらいのおっさん連中の笑い会う姿だったりと実に様々であった。

 種族こそ人間族、所謂ヒューマンばかりだがこれは仕様なのか、此所が人間族専用の始まりの街なのかは分からない。

 が、こういったいかにもな場所は嫌いではない。むしろ好ましい部類に入る。


 「いいねいいね!やっぱ、こうでなくっちゃな」


 道行く喧噪に、これからの生活の期待が高まる。 

 逸る気持ちを抑え、先ずはチュートリアルを受ける為に街のどこかに在るであろうギルドを探す事にする。

 




 補足として。

 良くある街に入る前のうんぬんかんぬんなイベントはなかった事を記述しておこう。

 てっきり止められたりするのかと思いきや、そんな事はなかった。

 門番?寝てたよ。立ったまま。

 



毎日雨ばっかりですね。

深夜投稿が常習犯になってきたKeiです。


はい。

やっと、剛太郎くんもといエディナさんが入っていきました。

早くもうっかりさんなエディナさん。

今後も彼(彼女)は武勇伝を轟かす事でしょう。

次回は街中の施設を巡ります。


ではまた。

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