序章:始まりの鼓動
初投稿になります。
良く在るような、古き良き時代の作品になります。
「ついに、ついにきたか……………………!」
机の上に設置してあるモニターが映す情報。
感極まった俺は、椅子を蹴倒すように立ち上がり、万感の思いを込めて拳を握り絞める。
[Master of Artist]
この世に氾濫し尽くしたネットゲームの人気カテゴリ、MMORPG。
その中の一つ、完全分業型MMORPGと銘打たれたこのシリーズは予想に反して、とんでもない売り上げを叩き出した。
なにしろ、第一に「戦闘職」と「生産職」。
さらには、戦闘系は魔法系、遠距離系、近接系などなど。
生産系は花形の「調理」「錬金術」「鍛冶」から「建築」「ギルド運営」なんてものまで多岐に渡っている。
しかし、此所で勘違いしてもらわないで頂きたいのは、
「全て別のソフト」
であることだ。
なんだそりゃ、と云われても仕方のないくらい [Master of Artist] のソフトの数は、とんでもないことになっていたりする。
つまり、いわゆるMMORPGの「魔法使い」「剣士」「鍛冶士」などのカテゴリー毎に。
いわゆるMMORPG一本分の情報量をつぎこんで、それぞれを独立したソフト化させたのだ。
結果、一つ一つがとんでもない自由度と、圧倒的なグラフィック、操作性、リアリティを兼ね備えた化け物ゲームとなった。
でもそれじゃあ造った武器とかどうすんの?手に入れたアイテムは?
そういった声が聞こえるだろう。
そこで、分業である。
このゲームはソフト一本買うと必ず、ハーバーリンクスと云われるサーバーへのアクセス権が手に入る。
そこは、全ての者が集う場所。
全ての楽園。
そこにおいてのみ、他のカテゴリのユーザー達と交流が図れるのだ。
此所がこのゲーム最大のキモなのだが、何故無料で使えるのかは [Master of Artist] 十二不思議に入っていたりする。
ただし、ダンジョンやモンスター出現エリア、鉱山、草原、海域、等全てのフィールドエリアはない。
ハーバーリンクスにて可能なのは他ソフトのユーザー同士の交流、他ソフトに無い材料、アイテムの取引が出来る事だけである。
他のソフトの世界に行けないんじゃ意味ねーよ。
そんなユーザーの批判も多かった。
それも、始まるまでの話。
ソフト一本だけでも、職業の幅の広さ、エリアの広大さ、出現モンスターの数、どれをとっても圧巻だったからだ。
ぐうの音も出ないその完成度にユーザーは納得した。
開発から既に10年。未だにソフト一本ですら極める事が出来たユーザーは居ないとまで言われた「Master of Artist」シリーズ。
その [Master of Artist] を創ったSoldert社が満を持して、遂に全ゲームユーザーの夢と言っても過言ではないあのシステムを礎にした。
[Master of Artist] のシリーズ統一VR化
震えが止まらなかった。
始めは只のキチガイな、頭のネジがぶっ飛んだゲームメーカーだった。
それが今じゃ、全世界を牛耳る最大のスポンサー企業。
そこの今も変わらぬ、もはやあんたらどんだけだと言いたくなる勇者達。
いつかはやってくれるんじゃないかと思っていた。
「夢じゃない、よな?こんな、こんな事が現実に起きるなんて…………」
俺こと、風見 剛太郎も [Master of Artist] に魅せられたユーザーの一人であった。
開発初期からこの訳のわからなさが逆に面白いんじゃね?
なんて、冗談半分でベータテストからやり始め、その造りの異常さに、その世界観の広大さにどっぷりとはまり込んだ。
気が付けば、古参も古参、最古参の部類に入っていたりするのだから恐ろしい。
ふと、今までの事を思い出す。
徹底的な魔界造武器を創るとかいって無駄に最高ランクの鉱石を使いまくったり。
なのに出来たのは初期装備とほとんど変わらない出来のものだったり。
あれは、ひどかった。
皆がマジ切れしてたしなぁ。
あまりに酷い出来だったので、第一線を走っているユーザーに装備させてボスモンスターに突っ込ませたりしてたな。
いつも冷静なあいつの怒り狂った様のといったら、もうお察し下さいとしかいいようがない。因みに後悔は微塵もしていない。
まぁ、それもこれも良い思い出だ。
もうVR化に向けてゲームは一時中断状態になっている。
次に彼等と会うのはVRでの [Master of Artist] だ。
「うわ、もうこんな時間かよ。バイト行かなきゃ!」
VR [Master of Artist] ログインまで、あと一週間
はじめまして、Keiと申します。
作品として久々に書いてみたので、色々おかしいところがあるかとは思いますが、
生暖かい眼で見守っていただけたら幸いです。
とりあえず次らへんまではちょっとした設定やキャラの小出しが続きます。