魔物
「………」
銃を突きつけられ、俺は咄嗟に両手を上げる。マスターは銃を構えながら距離を詰め、俺も同時に後ろへ下がる。
そして背中がドアに触れた時、額を滴る冷や汗が首元まで侵食する。
だが俺は、前まで銃を商売道具にしてきた身。微かに震える全身を抑え、口を開いた。
「なんで銃を構えるんだ。俺がなんかしたか?」
「お前は何もしてないかもな、魔物の割に人間のフリが雑だ。そういう奴は大体、民家を襲って生きながらえた奴らだ。お前は一体、何人の人を食べた。」
話が全く通じない。なぜか、俺を人外だと決めつけている。誤解を解くことはおろか、ここから生きて逃げるのもできそうにない。
(殺すか……?)
一瞬頭をよぎる。だが、こっちは生身であっちは拳銃を持っている。
「早く変装を解け!」
マスターの声が喫茶店内に響き渡る。
「待ってくれ、俺は人間だ。変装もしてない。」
「そんなの誰が信じるか。変装を解け。………撃つぞ。」
未だ、俺とマスターの間は膠着状態。
何度も誤解を解こうとするが、話は通じず、二人の距離は数歩歩けばぶつかる距離にまで迫る。
(このままだと死ぬな。何か、打開できそうな物はないか。考えろ。)
周りにはオシャレな装飾品とテーブル。どれも手を伸ばさないと取れない距離。
ドアノブは俺の左脇腹らへんにあるが、開いた瞬間にバレて撃たれる。打開は絶望的な状況だ。
距離があともう少し縮まれば、銃を奪える。それか、何か気をそらせる物があれば……
こうして考えている隙にも、時間は進んでいく。絶望的な状況で、焦ってはいないと虚勢だけは張っていた。
その時、ふと一つの疑問が浮かび上がる。
(なんで、あいつは撃ってこないんだ?)




