第四話 初めての戦い
「どけぇ!!」
その声を聞き、父様が何をするのか知っているかのようにトムさんがオークから距離を取る。
速度を上げた父様はそのまま頭を下げ、オークに頭突き叩き込んだ。
かなりの巨体のオークが血を吐きながら後ろに吹き飛び、地面を転がる。
手足がありえない向きに曲がってる。
もう起き上がれないだろう。
父様がすぐさま振り返り、次のオークに向かい走り出す。
先のオークと同じように父様は勢いをつけ頭突きをする。だが今度はオークも頭突きに対して角を掴もうと手を伸ばし構えている。
父様が吼える。
「うおぉ!!」
オークも負けじと吼え返す
「ガァァ!」
父様とオークがぶつかった瞬間一瞬互いが止まったように見えた。
「グアァァァ!」
オークが苦痛の声を上げ体勢を崩す。
よく見ると両腕が折れている。
そして父様は体勢を崩し倒れたオークの胸を踏みつけた。何度も、何度も。
「ギャァァァァ!」
オークが悲鳴をあげている。それでも父様は止まらない。
オークが動かなくなった頃。残りの1匹もトムさん率いる守備隊に討伐されていた。だが最初に父様が吹き飛ばしたオークが立ち上がり逃げようとしている。
父様がその背中を追う。
オークが振り向いて恐怖の顔を浮かべる。
「だめ、やめて、もうーーーー」
父様がオークの真横を掠め、角を掛けオークを宙に放り投げる。
宙を舞ったオークが頭から落ちてくる。
父様は二足で立ち上がり上体をのけ反らせ、落ちてくるオークに向かって頭突きをする。
グチャッ
ドサッ
頭部が弾けたオークの死体が転がる。
「うぉーーー!!」
父様が天に向かって雄叫びを上げる。
「「「「「うぉーーー!!」」」」」
守備隊員たちも揃って雄叫びを上げている。
日が傾き始め、赤く染まった父様達を更に赤く照らし出す。
僕は声も出せなかった。
固まっている僕を見て父様が声を掛ける。
「アルヴ、今日見た事を決して忘れない様に。この街とこの街に住まうすべての種族を守る義務と責任が我々ディアフロスト家にはあるのだ。」
父様は圧倒的に強かった。でも、戦いとはこんなにも残酷なものなのか。さっきまで生きていた3匹のオークが物言わぬ骸に変わっている。
そして勝利を喜ぶ父様達。
父様が続けて声を放つ。
「トム!今日は一旦街へ戻る!速やかに北の森の調査隊を編成し明日、日が登るのと同時に調査隊を派遣する!」
「ハッ!」
「日が暮れる!オークの死体も明日別の者に回収させる。戻るぞ!」
帰路の中ずっと考えていた。最後、残ったオークは逃げようとしていた。けれど父様は情けの一欠片も見せず殺した。あそこまでする必要があったのか?父様に聞きたかったがその場の空気がそんな事を聞けるものではなかった。
街へ戻ると北の森からオークが来た事が住民達の話題になっていた。そこに血に染まっているものの欠員も大きな怪我もなく守備隊や父様が帰って来たことに拍手喝采の嵐だった。父様を褒め称える者、皆の無事を祝う者、オークへの憎み口を吐く者、目を輝かせて父様を見つめる子供達と様々だった。家に着くと玄関の前に母様が立っていた。
「おかえりなさい」
母様は笑っていた。心配など何もしていなかったかの様だった。
水浴びをし夕食を済ませた後、父様にオークについて色々と聞きたかったが父様は明日の調査隊の編成について守備隊の方々と話す事があると外出してた。ヴィクターも付き添いで出ている。なので母様に今日の話をしがてらオークについてと父様の行動について聞いてみようと思い、母様の部屋へ行き扉を叩く。
「母様、入ってよろしいですか?」
「どうぞ」
母様の声を聞き部屋へ入る。
「アルヴ、どうしたの?」
「今日の戦いの事を話したくて」
「あら、ぜひ聞かせてちょうだい」
ーーー
「んー!父様はかっこよかった?」
「はい、でも父様は最後のオークを逃しませんでした。あのオークは逃げようとしていたのに」
「なるほどね。アルヴ、あなたはオークがどんな生き物かわかってる?」
「え?僕らと同じ獣人じゃ無いんですか?」
「半分正解よ。でもそれではオークについて何も知らないのと同じよ」
「どういう事ですか?」




