第三話 初めての恐怖
アルヴは森の奥へ走り出した。
沢沿いの道を走る。
少しすると道を外れた沢に血溜まりが出来ており3人の猪族がうずくまっている。
それを見て沢を下り、アルヴが叫ぶ。
「大丈夫ですか?!」
3人の猪族は無言でゆっくりと顔をあげる。
「猪族、、、?」
彼らにアルヴの違和感を感じた。
容姿が知る猪族とは少し違った。彼らの特徴的な牙が短く、着ている服も破れ汚れている。
そして口の周りは赤く濡れており手には金属でできた武器を持っておりその武器は血に塗れていた。
「え、」
アルヴの足が止まる。
アルヴと引き換えに猪族とおぼしき者達がアルヴに向かって動き出す。
奴らが立ち上がった事で血溜まりの正体がわかった。熊族だ。かなり大きい。でももう息はしていないだろう。奴らのうちの1人が内臓を引き出しながらこっちに向かってくる。
熊族が、、、食べられてる!!
奴らが口を開く。
「おいで。いっしょにたべよ」
「おいしいよ」
「こっちおいで」
怖い。
足が動かない。
怖い。
生物としての本能が逃げろと警鐘を鳴らす。
怖い。
目の前まで奴らが来た。
「なんでコイツにげない」
「あたまわるい?」
「コイツ、チビあんまり肉ない」
肉?食われる!
漠然とした恐怖ではなく明確に食われると感じようやく足が動いた。
「あ、にげた」
「まて」
「肉、あし、はやい」
怖い怖い怖い怖い怖い
必死に逃げた。
とにかく来た道を最速で走った。
北門が見えた。脇目も振らず走った。
門衛のネコ族がいる。走り抜ける。
通りにたくさん人がいる。走る。
家が見えた。
「父様!!!!」
家の扉を勢いよく開き父様の仕事部屋へ走る。
「アルヴ様?!」
ヴィクターにぶつかったがかまってられない。
父様の仕事部屋の扉を開けて父様に抱きつく。
「アルヴ、どうした?」
「森で!」
「森?ひとりで入ったのか?」
「熊族が食べられてた!」
「アルヴ、落ち着いて話しなさい」
父様が僕を抱きしめて話す。
徐々に落ち着きを取り戻し、森で見たことを話す。
「牙の短い猪族が熊族を食べていた?」
「うん」
父様の顔から表情が無くなる。
「ヴィクターッ!!!」
父様が聞いたこともない大きな声でヴィクターを呼ぶ。
廊下からバタバタと足音が聞こえてくる。
「ローガン様。お呼びでしょうか」
「北の森にオークが出た!討伐に向かう!支度をしろ!」
「はい!」
ヴィクターが部屋を出る。
彼と入れ違いでシアが走って入ってくる。
「ローガン様!」
「緊急時だ!後にしろ!」
「空から見回りをしている鳥族からの報告です!北の森の入り口にオークが3匹、北門に向かっているとのことです!」
「ッ!!アルヴの匂いを辿って来たか」
「ローガン様!」
ヴィクターが金属でできた何かを持って来た。
父様がヴィクターに頭を下げている。
何をしているかわからず邪魔にならない場所に移動する。
ヴィクターが金属でできた何かを父様の頭に被せ顎の下で留め具を固定している。
どうやら頭と首を守る為の兜のようだ。
「アルヴ来なさい。ディアフロスト家の戦い方を見せてやる」
そう言って父様は外に向かう。
外へ行くと父様が手を地面についていた。
「アルヴ、のりなさい」
言われるままに父様の背に跨る
「しっかり掴まりなさい」
父様が走り出す。
速い。自分で走るよりも数段速い。それなのに街の人達にぶつかる事なく隙間を縫い走っている。
「ローガン様だ!」
街の人々の声が聞こえる。
北の門まではあっという間だった。
「門衛!状況は?!」
「ハッ!現在トム隊長と隊員四名がオークを迎え討つため森の方へ出ております!」
「了解した!ここは任せる!」
守備隊員の返事も聞かず父様は再び走り出した。
走り出してすぐの場所だった。
1匹のオークとトムさん、他2匹のオークを隊員2人ずつで相手していた。
「アルヴ!よく見ておきなさい!」
そう言って父様は身をよじり僕を背中から落とし、さらに速度を上げる。
「どけぇ!!」




