第一話 アルヴテオス・ディアフロスト
少しお話し追加しました。
雪は、音を奪っていた。
世界を覆い尽くすほどの大雪が降り積もり、我がフォーキン領は白に沈んでいる。昼間に荒れ狂った吹雪はすでに去り、今は嘘のように空が澄み渡っていた。
夜だというのに、闇は存在しない。
満月が天頂にかかり、降り積もった雪を鏡のように照らし返している。大地は銀に染まり、空気は凍りつくほどに澄み切っていた。吐き出す息は白く、瞬く間に霧となって消える。
森も、丘も、凍った川も、すべてが白。
静寂の中、背後からの雪を踏みしめる音だけがかすかに響く。
「ローガン様、今夜は冷えますので中へお入りください」
「すまない、どうも落ち着かなくてな」
「当然です。ローガン様は父親になられるのですから」
「戻ろう」
彼の名はヴィクター、我がディアフロスト家に代々使えてくれているサル族の獣人の一族で、彼自身は祖父の代から仕えてくれている老臣だ。
彼の妻は今まさに産婆として妻の出産に立ち会ってくれている。
それから少し経ち屋敷が騒がしくなった。
「産まれたようですな。行きましょう」
「あぁ」
妻の部屋へ行くと白い小さな子を抱えた妻ディアナがベットに横たわっていた。
ヴィクターの妻が部屋から出で行く。
「あなた、男の子です。」
「ありがとう。お疲れ様。ゆっくり休みなさい」
ディアナに感謝と労いの言葉をかける。
これでまた私に守るものが増えた。愛する妻と愛しい我が子、それにこの地に住まう全ての者達。私はまた一つ強くなった。
どれほど時が経っただろうかドアを叩く音がした。
「どうぞ」
ディアナが声をかける。ヴィクターだった。
彼は我が子を見るなりこう言った。
「これは、まるで獣神様の生き写しですな。お名前はもうお決めですか?」
「あぁ。アルヴテオス・ディアフロスト」
「アルヴテオス。『白き神』ですか、良き名ですな」
「あぁ。」
子供の頃、父によく聞かされた話だ。
我らディアフロスト家は獣神ディアフロスト様の子孫だと。
我らは神の血族なのだと。
獣神様は我らと同じ平たく大きな角のを持つシカ族の獣人で巨大な体躯に全身白い体毛で覆われていたと伝わっている。
この獣大陸に種族間での争いが絶えなかった時代に生まれ、戦で親を亡くした子や、飢餓で子をなくす親達の姿に心を傷め、獣大陸を周り各地の種族の族長を説得して周り、それでもなお聞き入れない種族は力で捻じ伏せ、獣大陸を統一した。その間わずか6年。その際、志を共にし獣大陸を共に巡った者の子孫が今の獣王、レオハート家なのだと。そして、その功績からディアフロスト様は『獣神様』と呼ばれる様になったのだ。
アルヴテオスは父より聞かされていた獣神様の姿そのままのかと思う程に全身が白かった。
これが獣大陸が乱れる前兆なのか、
はたまた、ただの先祖返りの様に白い子が生まれただけなのか。
ローガンは後者である事を望むばかりであった。




