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第54話:グリンデルの決戦ー2


血が噴き上がる。

落ちるはずの腕が、夜風の中で一瞬だけ止まって見えた。


刃が鞘の中で鳴いた。


「――戻れ!!」


ムラマサの刃が、ようやく世界に触れた瞬間。

空気が軋んだ。


音じゃない。圧でもない。

時間そのものが擦れる感覚。


――五秒。


景色が巻き戻る。

血が吸い込まれる。

飛んでいた腕が、元の位置へ戻る。


ソーの左腕が、まだそこにある瞬間へ。


「……ッ!」


戻った瞬間に、

“切られる未来”を知った者の動きで、クリスタルワイバーンの魔法防壁を、ソーの左腕に展開した。


贄喰いが振り抜かれる。

同じ軌道。

同じ“はず”の結末。


――だが今回は、腕は落ちない。


驚いた顔の、ソーとワーズ


だがソーはこの違和感に身に覚えがあった。


「ありがとう!ムラマサかな」


「ああ――どんな最悪な未来も俺が変えてやる」


ワーズの目が、細くなる。

初めて、余裕の笑みの中に“違和感”が混ざった。


「……ほう?完全に左腕を切断したと思ったが、防がれるとは」


「お前ごときの攻撃なんて読めるんだよ」


俺はムラマサを握り直し、刃の重さを感じた。

五秒戻せる。

だが再使用には五秒のクールタイム。

つまり――いくら無茶できると言っても、タイミングを見誤ったら即詰みだ。


ワーズが俺を見た。


「未来視か。先読みか。時間操作か。どれにせよ人の域を越えましたね」


ソーが短く笑う。血が口端に滲む。


「……秘密だクソ馬鹿クソ野郎」


俺は息を吸い、叫んだ。


「――ラナ!」


『はいよ!』


胸元のネックレスが熱を持つ。

神王獣ラナの武装化が起動する。


白銀と金の装甲が、骨格を上書きするみたいに胸部を覆う。

心臓が二つあるみたいに鼓動が重なる。


耳のピアスが鳴る。

背中に、黒い翼が生える。

翼というより推進器。


両の腕が結晶に覆われる。

透明なのに硬い。硬く、光を溜める。

魔法防壁が周囲に展開される。


指輪が1振りの長いクナイに変わる。

イカヅチを纏い、空気を揺るがす。


右手には魔剣ムラマサ。


完全武装。

俺とソーが並び立つ。


「行くぞ」


「ああ」


ワーズが丁寧に頭を下げた。


「よろしい。では――もう少しだけ、上等な絶望を差し上げましょう」


正面からやり合えば、贄喰いの一振りで終わる。

ワーズは物質を自分に変える。増える。崩れても戻る。


だから隙を探す、焦らず、見誤らず。


ソーが前に出る。

極限まで闘力を高めた脚が床を踏み抜き、魔剣オボロが朧を纏う。


ワーズの影が増える。

壁がワーズになる。瓦礫がワーズになる。

本体がどれか分からない。


だが贄喰いだけは違う。

禍々しい気配が濃すぎて、偽物が混じれない。

贄喰いがある場所に本命がいる。


俺は黒龍の翼を噴かす。

加速が、背骨を引き剥がすみたいに強い。


視界が線になる。

次の瞬間、俺はワーズの側面にいた。


クリスタルワイバーンの手甲が防壁を展開。

贄喰いの斬撃が来ても“受けられる”角度に展開。


ソーが朧斬で牽制。

ワーズは笑ってかわす。

かわしながら、石の床を自分に変えて“腕”を生やし、ソーを掴みにいく。


「――遅いですね」


ワーズの声が重なる。

どのワーズの声か分からない。


俺はアークサーペントの刃を投げる。

雷が走る。

投げた刃へ――俺が跳ぶ。


瞬間移動。

距離が無くなる。


直感でワーズに、拳を叩き込む。


硬い。

肉ではない、石でもない、金属でもない“何か”。

贄喰いの持ち主にふさわしい、魔族の硬さ。


「素晴らしい打撃です」


褒めながら、ワーズは贄喰いを振るう。


来る。

防御不能。

かすっただけでも喰われる。


だが――ムラマサのタイミングではない。


なら、受けるしかない。


クリスタルワイバーンの防壁を最大まで張る。

透明な結晶が重なり、空気がガラスの海になる。


贄喰いの刃が、防壁に触れた。


キィイイイイン――!!


音が狂う。

石畳が波打ち、夜空の星が震える。


防壁が削れる。

削れるが、割れない。


(耐えた――!)


だが、その瞬間にワーズが言った。


「オリオン様からいただいた、贄喰いの大剣を何度も何度も防ぎおって…」


これだ、

防いだだけでこの怒りよう。その執着心に漬け込む。

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