第51話:グリンデル王都ー2
なにかの上に足を組み、まるで椅子のように扱っている。
その隣に、女魔族が寄りかかって笑っている。
レイズの喉が鳴った。
「……おい」
座られていたのは、ルーナの頭部と内臓のようなものだった。
ミストの目が、氷みたいに冷える。
「……外道が」
ソーは、拳を握りしめた。
手袋の下で、皮膚が裂けるほどに。
「……ルーナ……レーオ……」
ソーの声が震える。怒りで。悲しみで。
でも――倒れない。折れない。王子の鑑だ。
俺は息を吸った。
「レイズ、ミスト」
レイズが俺を見た。
その目に、遊びが一ミリもない。
「コイツらは任せた。
俺とソーは城に入ってワーズを追う」
レイズが、ゆっくり笑った。
いつものチャラさじゃない。殺すための笑いだ。
「任せろ。
“ぐちゃぐちゃ”にする」
ミストが静かに頷く。
「……人間を舐めるなよ」
俺とソーは城門へ向かう。
背中に、レイズとミストの殺気が立つ。
それは頼もしい火柱みたいだった。
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城内
城の中は、妙に静かだった。
ソーが言う。
「罠があるかもしれない。慎重に――」
俺は首を振る。
「……罠は、ない」
ソーが眉を寄せる。
「どうしてわかるんだい?」
俺は言葉を選んだ。
魔族と対峙したから。悪意の“質”を、肌で知ったからだ。
「あいつらは、人間を倒すことに策を巡らせない。
罠を準備し勝率を上げようと考えない。
――人間を恐怖に陥れる工夫しかしない。」
悪ソーが舌打ちする。
「クソ舐めやがって。
だがそこが勝機にもなる。
クソ舐めてるやつは、クソ油断する」
俺たちは、悪意が濃い方向へ進む。
まるで鼻が腐臭を追うみたいに、自然と足が動く。
そして――玉座の間。
扉を開けた瞬間、俺の背筋が凍った。
そこに、ルーナが座っていた。
(相棒)
ラナの声が、低い。
(ルーナはすでに城の前で)
「……ルーナ! 無事だったか!!」
俺はあえて声をかけた。
ソーも剣に手をかける。
次の瞬間に斬れる距離で、しかし踏み込まない。
“ルーナ”が、ゆっくり顔を上げた。
瞳が、まったく合ってない。
そして――声が出た。
「私は無事だ」
一瞬、俺の頭がバグる。
どちらとも確信が持てない。
“ルーナ”は続けた。
「レイズとミストが危ない!」
ソーの目が鋭くなる。
「城前のルーナの頭部に、ワーズが変身してたのか!!」
ソーは間髪入れず、引き返すために振り返った、振り返ってしまったのだ。
もちろんレイズやミストの身を案じての行動でもあるが、ルーナは生きていた、そう思いたかったからだろう。
「……甘いですねぇ」
ルーナだったものは、一瞬でワーズに姿を変え、巨大な大剣がすでに振り返ったソーの頭部近くまで振り下ろされていた。…




