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第48話:死への道中ー2

 少し離れた岩陰で、俺は腰を下ろした。

すると、気配もなく、レーオが隣に来る。


「……君が、あの武装化の戦士だね」


声は静かだ。

いつもの軽薄さはない。


「オレを知ってたのか?」


「うん。長老から聞いてたからね」


レーオは空を見上げる。


「君の能力は、シルアでは“英雄譚”として語られてるよ。

石板にね、神獣を纏いし英雄」


「……あの婆さんか」


思わず苦笑する。


「石板はオレも見せてもらったよ。

 なんて書いてあるかわからなかったけどな」


「そりゃそうさ、僕も読めないし」


レーオは肩をすくめた。


「あれは古代文字。

しかも、かなり昔の。

うちの国でも読めるのは、長老と……

封魔戦争を実際に生き延びたエルフくらいさ」


「何歳なんだよ、それ」


「少なくとも1000歳は越えてるね」


レーオは少し笑う。


「エルフは悠久に近い時を生きるけど、無限じゃない。

数千年後には、あの文字を読める者はいなくなるだろうね」


「……寂しいな」


思わず、そう口にしていた。


レーオは一瞬、黙る。

それから、静かに言った。


「形あるものはいずれ消える。

文字も、石も、国も」


「……」


「でもね」


レーオは胸に手を当てる。


「怒りとか、悲しみとか、守りたいって気持ちは残る。

それが次に繋がる。

君が今、怒っているように」


胸の奥が、少しだけ温かくなった。


「……ありがとうな」


「礼はいらない」


レーオは立ち上がる。


「君は、ちゃんと“人の心”を持ってる。

だから、僕らは一緒に戦う」


その背中を見て、俺は思った。


――エルフは冷たいわけじゃない。

感情を、無駄に使わないだけだ。


「アーティファクトを探しているんだって?」


「ああ、魔族と戦うためにな」


「うちの国に、アーティファクトの伝承があるよ」


「本当か!?」


「この戦いが終わったら一緒に探そうか」


---


ルーナが近づいてくる。


「そろそろ出発よ。」


その声は静かだが、決意がある。


レイズが立ち上がり、拳を鳴らす。


「行くぞ。

次は――王都だ」


誰も叫ばない。

誰も誓わない。


ただ、全員の目が同じ色をしていた。


――怒りを、刃に変えた目だ。


俺は胸元に手を当てる。


「ラナ」


(うん)


声は優しい。

だが、芯は鋼だ。


(相棒。

今度は――助けよう)


「ああ」


飛竜が、再び翼を広げる。


静かな怒りを乗せて。

グリンデル王都へ――一直線に。

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