第46話:魔の一族たる所以ー4
骨が千切れる音がした。
魔族が吹き飛び、地面に転がる。
同時に、レイズの方から爆音。
魔族が重力で自分の身体を加速させ、レイズの斬撃を避けている。
だがレイズは笑っていた。
「どうしたぁ!」
竜騎士の闘力が、熱に変わる。
「虫の攻撃を避けるので精一杯だな!」
魔族が吐き捨てる。
「虫が、さえずるな」
次の瞬間、魔族の重力魔法が一点に収束した。
レイズの足元が沈む――
しかし沈んだのは“重力”でじゃない。
レイズの闘力で、地面がへこんだのだ。
「お前さ」
レイズが、沈みながら一歩一歩前へ進む。
笑っていない。
「人間なめすぎ」
そして、竜騎士の斬撃が炸裂した。
身体が、空中で裂けながら吹き飛んだ。
重力が乱れ、村の空気が軽くなる。
魔族が這って起き上がる。
「……虫、どもめが……!」
俺は一歩前に出た。
「後悔して死ね」
ムラマサの刃が閃く。
――終わらせる。
斬撃は短い。
でも、迷いがない。
二体の魔族が、崩れ落ちた。
一瞬だけ、静寂が降りた。
それから――俺は息を吐く。
「……これが、魔族か」
レイズが肩で息をする。拳が震えている。
怒りで震えている。
「ただの魔族でこれだ」
レイズが唸る。
「貴族が出てきたら……」
俺は村人たちを見る。
生きている。
でも、心が戻るのに時間がかかる。
「……急がねぇとな」
(うん)
ラナの声が、静かに頷く。
(こうしている今も別の村が同じような状況だ)
遠くから、ミストの合図が見えた。
索敵の結果――他の魔族はいない。
生存者は何名か確保できたが、そこに子供の姿はなかった。
ソーがこちらへ戻ってくる。
表情は硬い。
だが、村人の背中に手を添える仕草が優しい。
そして、村人の一人がソーに叫んだ。
「何で……何で俺たちがこんな目に!!」
その声は責めだ。怒りだ。悲しみだ。
全部が混ざった、壊れた叫び。
ソーは一歩も引かなかった。
逃げない。
ただ、受け止めた。
俺はソーの隣に立つ。
「……誰も悪くない」
俺の声は、俺の中の怒りで少し震えていた。
「悪いのは、全部魔族だ」
ソーが、ゆっくり息を吸って頷く。
「……そうだね、一匹たりとも生かしておけない」
そして、魔剣オボロの柄に手を置いた。
「だから――取り戻す」
俺は空を見上げる。
グリンデル王都の方角。
まだ、遠い。
でももう“遠い”なんて言ってられない。
この国の各地で、今も同じことが起きているかもしれない。
魔族は人の心の壊し方を熟知している、楽しんでいる
「行くぞ」
レイズが低く言った。
「次は――ワーズを引きずり出して、首を落とす」
(相棒)
ラナが、いつもの軽さを少しだけ戻して言う。
(怒っていい。でも、焦らないでね?)
「……分かってる」
俺は村の入口を、もう一度だけ見た。
目に焼き付いたものを、消さないために。
そして背を向ける。
「一刻も早く、王都へ」
八人の奪還部隊が、再び飛竜へ乗る。
翼が広がり、風が巻き上がる。
この村の絶望を、次へ繋げないために。
――グリンデル王都へ。




