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第43話:魔の一族たる所以ー1

※かなりグロテスクな描写を含みます。


飛竜の影が、グリンデルの国境線を越えた瞬間。

空気が変わった気がした。


土の匂いが薄い。

風が、やけに乾いている。

……そして、濃い“死”の気配がする。


「……気持ち悪ぃな」


レイズが吐き捨てた。軽口でも冗談でもない。

レイズの声が、こんなに硬いのを俺は初めて聞く。


「グリンデルは、本来こういう土地じゃない」

ミストが静かに続ける。「……何かが、汚されている」


ソーは何も言わず、ただ前を見ていた。

腰には二振り――聖剣ラナと魔剣オボロ。

どちらも鞘の中で、じっと息を潜めているみたいだった。


胸元のペンダントが、冷たく揺れた。


(相棒。……嫌な感じする)

ラナの声が低い。ふざける余裕がない声音。


「そうだな」


飛竜が高度を落とす。

国境から少し入った場所に、村が見えた。


――いや、“村だったもの”が、残っている。


家々の煙突から煙は上がらない。

畑は踏み荒らされ、入り口には村人らしき人たちが何やら作業をしている。


そこに、嫌な“何か”があった。


人間の千切られたような手足や胴体が、地面に並べられ、

イーリス大陸の文字で――


『ようこそ 魔の国へ』


言葉を読んだ瞬間、胃の底がひっくり返るような感覚がした。

鼓動が、遅れて怒りに変わる。

よく見ると部位の大きさは、まちまちだが、おそらく全て大人のそれではないだろうと推測される。


「……笑えねぇ」


レイズが唸る。


「笑えねぇぞ、魔族」


ジークが、飛竜の鞍の上で固まっていた。

唇を震わせ、息を吸おうとして吸えていない。


「……ひ、ひどすぎる……」


ソーの横顔が僅かに歪む。

普段の温厚な空気が消えて、王子の“戦う顔”がそこにあった。


そして――ソーの声が一瞬だけ荒くなる。


「……クソ胸糞わりぃな」


“悪ソー”が覗いただけ。

二つの魂が同じく怒っている。


飛竜が入り口付近に着地する。砂埃が舞い、村人たちがビクッと震えた。

それでも村人たちは入り口に、何かを並べる作業をやめない。


よく見ると、頭部だった。おそらく入り口に並べられた手足と同一人物たちのだろう。


「お前ら何やってる!やめろ!」


レイズが叫ぶ。


目が焦点を結ばない。

声を掛けても反応が遅い。

自分の意思を、どこかに置いてきてしまったみたいに。


「全員、武器を下ろして。まず保護だ」

ミストが即座に指示を出す。


俺たちは村の入口に近づく前に、まず“生きている”村人の側へ向かった。


「……大丈夫。助けに来た」


ソーが膝をついて、震える女性に目線を合わせる。

声は優しい。けど、拳は震えている。


女性は、ようやく言葉を絞り出した。


「……遅い……」


その言葉は、責めるというより――壊れていた。

時間が止まったまま、絶望だけが残った声。


俺は一歩、前に出る。


「……何が…あったんだ」


女性は、口を開きかけて、閉じた。

目だけが、入口に並んである“何か”を見て、吐き気を堪えるみたいに揺れる。

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