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第2話:友好国ミリア

前話の続きです。

今回はウルシア王都を出て、友好国ミリアへ向かう道中回。

……雑用係のはずなのに、すでに嫌な予感しかしません。

楽しんでもらえたら嬉しいです!


 ギルドの朝は、鐘の音と怒鳴り声から始まる。


 その日も扉をくぐった瞬間に、いつもの受付嬢が手を振ってきた。


「おーい、雑用くん。待ってたよー!」


「おはよう。……嫌な予感しかしない」


「朝から縁起でもないこと言わないの。はい、これ」


 目の前に一枚の紙が突き出される。


 【物資輸送補助 ウルシア王都 → 友好国ミリア】


 内容はシンプルだった。食料・薬・道具を積んだ馬車二台を、隣国ミリアまで運ぶ。片道5日。護衛は三名。俺は「積み込み・積み下ろし・簡単な見張り」。


「……俺で大丈夫か…?」


「雑用枠だからね。荷物を落とさなきゃ大丈夫。護衛はBランク冒険者を三人つけるから、モンスターに関しては気にしなくていいよ」


 受付嬢が横目で壁際の一団を指す。


 長弓と細身の剣を背負った男。短剣二本を腰に下げた女。背中に馬鹿みたいに大きな大剣を背負った髭面。


「リード、カナ、ガロウ。Bランク冒険者。王都じゃそこそこ名の知れたやつらだよ」


「そこそこ〜?」と、弓男が笑う。


「こう見えて俺ら、3人いればどんなゴブリンにも負けないぜ」髭面が自慢げに言う。


「それ自慢になってるのか?」


 思わず口を出すと、三人ともおお、と視線を向けてきた。


「お前が噂の新人雑用係か」と大剣のガロウが言う。「昨日、帳場で数字とにらめっこしてたやつだろ。真面目そうだ」


「ただの雑用係だよ」


「雑用がいないと仕事は回らねぇ。荷車が動かなきゃ始まらねぇ。だから、よろしくな」


 ガロウはあっさり握手を求めてきた。分厚い手。ひび割れた皮膚。生き方が手の平に刻まれている。


「昼前には出るよ」と受付嬢。「支度しておいで。門の前で集合ね」


 紙を丸めながら、俺は一度だけギルドの二階を見上げた。昨日眺めた地図が、そこに掛かっている。ウルシアの西隣に、小さく「ミリア」と記されていた。大陸四十二カ国のひとつ。俺の世界よりずっと多きいようで、ずっと狭い。


 ――隣の国へ行く。


 文字にすると大したことはなさそうだが、異世界に来てまだ数日、雑用としてだが王都から出るのは初めてだった。


     ◇


 昼前。王都の南門には馬車が二台、既に待機していた。荷台には木箱、麻袋、樽。米、干し肉、芋、薬草、包帯、工具。見慣れない形の農具が束ねられている。


「よし、最後の樽、こっちに寄せてくれ」


 ガロウの声に合わせて、俺は樽を押し込む。重さはあるが、持てないほどではない。体力仕事は嫌いじゃない。やっていれば、余計なことを考えなくて済む。


「積み方が上手いね」と、短剣二本のカナが言った。「積み方が下手だと道中荷崩れを起こすんだ、泣きながら直すハメになるよ」


「そういうの事前に教えてくれればもっと上手に積み込めたよ」


「お、言うね〜雑用係〜」


 軽口の応酬は、緊張をほどいてくれる。リードは既に弓弦の張り具合を確認しながら、門の上を眺めていた。


「……今日は空が静かだな」


「ドラゴンはいない方がいいのか?」


「そりゃあね。あいつらが低く飛ぶ日は、大抵ロクなことが起きないからさ」


 言いながらも、リードの声は淡々としていた。この世界では、ドラゴンは「日常」であって、「伝説」ではない。俺の常識のほうが、ここでは浮いている。


 門が軋んで開く。兵士が通行証を確認し、槍をどけた。

 外の世界は土の匂いが濃い。石畳はすぐに固い土道へ変わり、道の両脇には畑が広がる。遠くには黒々とした森、そのさらに向こうに、かすかに山脈の影が見えた。


「ウルシア王都、初の出都おめでとう」とカナが笑う。「感想は?」


「……空が広い」


 それしか出てこなかった。けれど三人は、妙に満足そうにうなずいた。


「そうだろうな」とガロウ。「王都の中にいる時間が長いと、壁の世界が“存在は知ってるけど実感がない”んだよな」


「俺は転移した瞬間からずっと実感がないけどな」


 そう返すと、三人の視線が一斉にこちらへ向いた。数秒してから、リードが肩をすくめる。


「……そうだな。キミの場合は桁が違うな」

言いふらしてる訳では無いが交流のある相手には転移者だと言うことは伝えている。

そのたびに驚きと憐れみの中間の顔をされることが多い。


「まあ安心しな」とカナが言う。「私らがついてる。モンスター出ても、あんたの仕事は荷から落ちないことと、腰を抜かさないこと」


「それも立派な仕事だ」とガロウ。「生きて帰るのも仕事のうちだからな」


 その言い方は、冗談半分で、半分は本気に聞こえた。


     ◇


 最初のモンスターは、午後になってから出た。


 ぬかるみの多い林道を進んでいると、馬が耳を伏せる。地面から、ぷく、と泡が弾けるような音がした。ぬるりとした半透明の塊が、道の真ん中に現れる。


「スライムか。久々だな」


 リードが弓を取る。もう一本、もう一体、道の脇からとろりと溢れ出した。数は五。強そうには見えないが、馬は明らかに嫌がっている。


「毒とかあるの?」


「色が薄い。普通のやつだ」とガロウ。「荷車、止めろ」


 御者が手綱を引き、馬車がぎし、と止まる。リードが矢を番え、ひと息で二本、連続で放った。矢はスライムの中心をたやすく貫き、べちゃりと音を立てて地に崩れ落ちる。


 カナも飛び出し、短剣で残りを切り刻んだ。ナタデココを乱暴に崩したような光景。粘液が飛び散り、草を濡らす。


「はい終わりー。ほら、毒はないからビビらないの〜」


「ビビってない」


「顔が固いぞ〜」


 その会話の裏で、俺の視線は勝手に“それ”に吸い寄せられていた。道端でぺしゃんこになったスライムの死骸。胸の奥が、奇妙にざわつく。


「……ちょっと見てくる」

そこに俺の意思はなかったかのようにボソッと出た。


 荷車の影に隠れるように回り込み、誰もこちらを見ていないのを確認してから。

なぜか周囲にバレては行けない気がした。

俺はしゃがんだ。右手を、そっと伸ばす。


 指先が、半透明のゼリーに触れた。


 瞬間、手のひらから肘にかけて、ぞわりとした感触が駆け上がった。スライムの体が、弾けるように形を変える。ぬるぬるが一瞬で固まり、俺の右手にぴたりと吸いついた。


「……っ!?」


 思わず息が詰まる。青みがかった半透明のガントレット。内側は温かく、外側は薄い殻のように硬い。拳を握ると、手の甲に淡い紋様が浮かぶ。


 このガントレットの使用方法が頭に流れ込んでくる、意味不明な感覚が手先に集まる。試しに腕を振ったとき、その感覚が勝手に指を引いた。


 びゅ、と音がして、透明な液体が前方の地面に飛んだ。液体が触れた草がじゅ、と音を立てて黒く溶ける。


「……溶解液?」


 思わず小声で呟く。スライムの“能力”だと直感で理解した。生物の力を、装備に変換?それが俺の――


「おーい、何してる。大丈夫か?」


 ガロウの声に、はっとして顔を上げる。視線を落とすと、右手のガントレットはすでに形を失い、ただのドロドロした死骸に戻っていた。


 ……俺が離したからか。


「ちょっと足滑らせただけだ。問題ない」


「気をつけろよ。スライムの死骸って見た目通り滑るからな」


 そう言って、ガロウは特に疑う様子もなく戻っていく。俺は心臓の鼓動をやり過ごしながら、スライムの残骸を見下ろした。


 ――おそらく人間以外だけだ、生物の死骸?。

 ――触れれば“武装化”する。

 ――離せば、死骸に戻る。


 条件が、少し見えてきた気がした。


     ◇


 その日の夜は、街道脇の小さな広場で野営になった。焚き火の上で干し肉と芋がぐつぐつ踊り、空には二つの月。風は冷たく、炎はそれを弾くように揺れる。


「で、どう? 初遠征の感想は」


 カナが木皿を片手に、こちらを覗き込む。芋が熱い。


「……思ったより異世界感ないな、って」


「異世界感、ねぇ」とリード。「余裕なのはいいけど、気は抜いちゃだめだよ」


「お前らのほうがよっぽど余裕あるように見えるが」


「Bランクだからな」とガロウ。「王都でBランクは真ん中くらいだが、田舎だとBランク冒険者一人いれば1つの村なら安心できるレベルだな」


「Sランクって、やっぱり別格なの?」


「単独での神獣クラスモンスターの討伐が可能と言われてる」とリード。「実際やってる奴はあまり見たくないね。山が1つ消し飛んだとかも聞くかな」


 冗談か本気か分からない言い方だった。山がなくなる想像は、なぜか逆に笑えた。


「そういえばさ」とカナが火をつつく。「ミリア、今ちょっと騒がしいらしいよ」


「騒がしい?」


「うん。神獣クラスモンスターが二体、解体場に運び込まれたって話。クリスタルワイバーンとアークサーペント」


 さっきのスライムの感覚が、胸の奥でふとざわめいた。


「……2体同時に?」


「おそらく縄張り争い。どっちも自分のテリトリーだって譲らなくて、一晩中やり合って両方死んだんだってさ。死ぬまで戦うってどんだけプライド高いのよって話」


「神獣二体ぶつかり合った跡地、地形変わってそうだな」とガロウ。「ミリアは今、商人と冒険者と職人で大賑わいだろう。神獣素材なんて滅多に触れない」


 焚き火の火がぱち、と弾ける。

 神獣の死骸――イメージだけで、何かが喉に引っかかる。


「それだけじゃあない」とリードが言った。「ミリアには、今もう一つ“厄介な用事”がある」


「聖剣ラナ、だな」


 ガロウの言葉に、火の粉が一気に飛んだ気がした。


「……聖剣」


 思わず聞き返すと、三人ともこちらを見る。


「噂、聞いてないの?」とカナ。


「俺は数日前にこの世界に落ちてきた身だぞ」


「ああ、そうだったね」とカナが苦笑する。「ついこの前ウルシア王都から、聖剣ラナを回収する部隊が編成されて派遣されたの、それで遺跡から“聖剣ラナ”を持ち帰るのに成功した。でも、その場にいたAランク冒険者が、聖剣に触れた瞬間におかしくなって――」


「聖剣に魅了されて、その場の仲間を皆殺しにした」とリードが淡々と継ぐ。「そのまま近くの古城に籠城してる。で、今度はミリアとウルシアの連合で奪還部隊を編成するって話だ」


 焚き火の向こう側で、夜が少しだけ濃くなる気がした。


「魅了、って?」


「聖剣が持ち手の心を乗っ取る。剣にとって“都合のいい持ち主”にするためにな」とガロウ。「聖剣ってのは、本来は世界を守る側の武器のはずなんだがな。……使う人間のほうが脆いと、どっちが主か分からなくなる」


「聖剣って、いくつもあるんだよな」


「六本。魔剣が四本。アーティファクトが五つ。数だけは古い記録にも残ってる」とリード。「そんな代物は伝承だけだと思ってた。……まさか本当に存在していたなんてね」


「どういうこと?」


 三人は少し顔を見合わせてから、ガロウが火越しに言った。


「魔族の封印が揺らいでいるという噂と同時に各地で聖剣や魔剣、アーティファクトの封印場所が発見され始めた」


 その言葉で、焚き火の音が一瞬だけ遠くなった気がした。


「およそ千年前、この大陸には、世界を支配しようする魔族がいた。聖剣も魔剣もアーティファクトも、そのときの“反撃の牙”として作られたって話だ。封魔戦争。教会の説教でもたまに出てくるだろ?」


「……聞いた気はする」


 実際には聞いていない。だが、ここで“知らない”と返すのは会話が重すぎる気がして、曖昧に返した。


「その魔族の封印が、千年経って、綻び始めてる。だから各国が、慌てて伝説の武具を探し始めている。聖剣も、魔剣も、アーティファクトも。……八咫烏みたいな物騒な連中も、その隙間で動いてるって寸法だ」


 八咫烏。その名前は、ギルドで小耳に挟んだ気がする。


「何がなんだか分かんないよね」とカナが笑って、少し肩をすくめる。「あんたの世界より、たぶんこっちのほうが修羅場多そう」


「やめろ。俺は雑用で一生終わる予定だ」


「願望はいつだって叶わないことが多い」とリード。「世界が、キミを放っとかないかもよ?」


 火が小さくなり、ガロウが薪を一本足す。ぱち、と音がして火の粉が夜空に吸い込まれていく。二つの月が、雲を一枚かぶった。


 聖剣。魔剣。アーティファクト。

 聞くだけなら、ただの英雄譚だ。だがその英雄譚が、街や人を巻き込み始めている。俺の手に、一度だけ溶けるスライムのガントレットが現れたのと同じように。


 火を見つめていると、不意に自分の手の平が気になった。あのときの感覚。ぬめりと、変形と、力の流れ。俺だけがそれを知っている。


 この世界に来て、まだ本当に何もしていない。

 でも、何もしていないうちから、何かを持ってしまっている。


 それが、少しだけ怖かった。


     ◇


 二日目の昼前、森が深くなり、日差しがほとんど届かなくなったころ。


「警戒しろ」とリードが声を落とした。「ゴブリンの気配だ」


 その言葉と同時に、耳障りな笑い声が木々の間から響いた。


「上だ!」


 リードの叫びとほぼ同時に、矢が一本飛んでくる。俺の頬を掠めて、荷台の板に突き刺さった。次の瞬間には、緑色の肌の小さな影が枝から飛び降りてくる。粗末な短剣、歪んだ牙。背中にくくりつけられた袋。


「馬車の下に隠れろ!」


 ガロウの声に、俺は反射的に荷車から跳び降り、地面に身を伏せた。頭上を何かが掠める音。カナの短剣が、ゴブリンの首をあっさりと切り裂く。血が土に落ち、黒く染みを作る。


 別の枝から飛び降りた二匹目は、リードの矢に喉を射抜かれた。その後ろから三匹目が飛び出した瞬間、ガロウの大剣が横一文字に唸り、まとめて二匹を薙ぎ払った。


 短い悲鳴。骨の折れる音。


「……四匹か。少ないな」


 血を払うように大剣を軽く振りながら、ガロウがぼそりと言う。こちらからすれば十分多い。


「大丈夫かい?」とリードが振り返る。


「ああ」


 答えながらも、俺の視線は勝手に足元の一つの死骸へ吸い寄せられていた。喉を射られたゴブリン。濁った目、ひきつった口元。人型だが、人間ではない。


 ――行けるか?


 自分に問いを投げた。人間以外。死骸。触れたいような、触れたくないような感覚が綱引きをする。


「荷物落ちていないか、見てくる」


 そう言って、わざと荷車とは逆方向へ回る。護衛三人の視線が一瞬離れた隙に、俺はしゃがみ込み、ゴブリンの腕を掴んだ。


 スライムのときと同じような、だがもっと重たい感触。ゴブリンの体がぼふっと崩れ、骨と肉と革がぐちゃぐちゃに混ざったような塊になったかと思うと、それが一気に細長く伸び、俺の右手に絡みついた。


「……なんだ、これ」


 手の中には、奇妙な形の刃物が握られていた。刃は歪で、ところどころ欠けているが、刃先だけはやけに鋭い。柄には細かい突起があり、握ると自然と手に馴染む。おそらくゴブリンの骨や皮膚が混ざったものだろう。


 試しに空を軽く払うと、ひゅ、と細い風切り音がした。重さのわりに振りやすい。


 力の元は、あくまで死んだ生物の“魔力”なのだろうか。


「……ゴブリンは特性やスキル的なのはないか」


 離すと、武器は一瞬にして元の死骸へ戻った。スライムやゴブリンそのものではなく、「俺が纏っている間だけ」形を与えられている。モンスターの力を、一時的に借りている感覚。


「おーい! 荷物は大丈夫そう?」


 カナの声に、俺はきびすを返した。


「ああ。問題ない」


「顔色悪いよ」とカナ。「ちょっと危なかったしね。夜、軽めに飲む?」


「飲みすぎるなよ」


「それ私が言おうとしたのに」


 死骸から離れるほどに、胸のざわめきは薄れていった。能力の正体が少しずつ分かってきているぶん、怖さも増していく。自分だけが持っている、よく分からない武器。切れ味はいいが、鞘がまだない。そんな感覚だ。


     ◇


 夕方、森が途切れて視界が開けると、遠くに街の影が見えた。石壁に囲まれた輪郭。王都ウルシアよりは小さいが、それでも十分に大きい。煙突から出る煙がいくつも空へ伸び、城門の前には小さな列が見える。


「あれがミリアの王都だ」とガロウ。「飯がうまいんだよなぁ」


「それ大事だよね」とカナ。「ウルシアのパン、固くない?」


「カナはグルメだからね」


 リードは弓を肩に担いだまま、遠くの街をじっと眺めていた。


「……あの辺りかな」


「何が?」


「神獣の死骸が運び込まれてる解体場。街の南側。……それと、聖剣ラナの奪還部隊が集まってるっていう軍の詰め所も、あの辺りだ」


 言われてみると、南側の空気がどこかざわついているように見えた。煙の量が多く、人の影も濃い。ここからではよく見えないが、街全体が落ち着かない呼吸をしている感じがある。


「俺たちの仕事は、あくまで物資を届けて、引き渡すまでだ」とガロウが言う。「だが聖剣ラナを奪還した部隊の一行ってなったら一気に名が上がるな」


「確かに」


 なぜオレが肯定したのか、自分でもよく分からない。首を突っ込む気はない。ただ、無関係ではいられない、そんな予感だけが、薄く喉元に貼りついていた。


「でもさ」とカナが小さく笑う。「“伝説”に関わるの、ちょっとワクワクしない?」


「俺はしない」と即答する。「一生雑用で終わるのが理想だ」


「いいね、それ。私も似たようなこと思ってた時期あった」


「今は?」


「今? うーん、“死なない範囲でおいしい思いがしたい”かな」


 それはそれで危険そうな願望だ。だが、どこか正直で、嫌いではなかった。


 馬車はゆっくりと街へ近づいていく。日が沈みかけ、二つの月がその姿を濃くしている。風が少し冷たくなり、馬の吐息が白くなった。


 聖剣ラナ。

 神獣の死骸。

 封印の揺らぎ。


 まだ全部が“他人事”のはずなのに、なぜかその全てが、自分のすぐ近くにぶら下がっている気がしてならなかった。


 ――ただの雑用係でいたい。


 本気でそう思いながら、俺はミリアの城門を見上げた。


 このときの俺はまだ知らなかった。

 この街で起こることが、俺の能力と、この世界の“輪廻”を引きずり出す引き金になることを。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

ミリア到着、そして“神獣の死骸”と“聖剣ラナ”の話が一気に近づいてきました。

次章から、いよいよ街の空気が変わります。

続きもよろしくお願いします!

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