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第12話:暴力の黒翼と幻想の黒翼

八咫烏は、個人的に好きです。

ソーが、一歩前に出た。

 その横顔は悪意に満ちた笑顔


「へぇ……お前らが八咫烏か。

 思ったより口達者なクソガキだな」


「はぁ? 誰がクソガキだコラァ。

 ……お前、王子のくせに口悪すぎだろ」


「クソ殺す気満々の目してんじゃねぇよ。

 そんな目で睨むとモテねぇぞ、八咫烏くん」


「あたりめぇだろ、殺すぞクソ王子ッ」


 ――あ、悪ソーが出てきた。

 あの荒っぽい口調は完全にアイツだ。


 ヴラーナが肩を揺らして笑う。


「レイヴィー、落ち着いて?」


「 その呼び方はやめろって言っただろババ……」


 レイヴンの言葉は最後まで届かなかった。


 ヴラーナの笑顔がにこりと深まり、表情は変わらないまま瞳だけが冷たく光った。


「えぇ? 今、なんて言おうとしたのかしら……レイヴィー?」


「……よ、よぉーし!こ、殺し合いだぁクソ王子ぃ!」


 完全に尻に敷かれている。


 ふざけた雰囲気だが、気配は最強。

 この二人――間違いなく“各分野の最上位”だ。



 ソーが一歩前に進むと、レイヴンも立ち上がり、石柱から飛び降りて着地した。


 砂埃一つ立たない。

 それほど正確な着地。


「……よし。

 クソ王子、名乗れ。殺し合う前の礼儀だ」


「ソー・ウルシア。

 ウルシア王国第四王子――そして、聖剣ラナと魔剣オボロの適合者だ」


「いいねぇ、オレは八咫烏のレイヴン。あー、お前らを全滅させる適合者だ」


 二人の間に、静かだが濃密な“殺気の線”が走った。



 そのとき、ヴラーナがひらりと手首を返し、ソーへ幻術を放つために指を鳴らす。


「では、まずはあなたから――王子さま♡」


「ヴラーナぁ!!!!」


 レイヴンが怒鳴った。

 怒鳴った、というより本気の叫びだ。


「そいつに幻術かけんな」


「……ええ? あなた死ぬわよ?」


「頼む」


レイヴンが子供のように言うと、ヴラーナは頬に手を当てて微笑んだ。


「しょうがないわねぇ……レイヴィーにそこまで言われたら」


「レイヴィーって言うなッ!!!」


 そこまでが、戦闘前の“ほんの数秒”で起きた出来事。

 だが、その会話の裏で、カリナと俺はすでに戦闘態勢に入っていた。



「――来ます」


 カリナの声は落ち着いていた。

 剣を構えていなくても、流石は聖騎士、オーラがある。


 ヴラーナの視線がこちらに移った。


「またお会いしましたね、聖騎士カリナ。あなたの噂はどこにいても耳にするわ」


「噂より強いですよ、私は」

剣を抜き構える。


「楽しみ……♡」


カリナとヴラーナの掛け合い中に俺はセイレーンのピアスを眼鏡とマスクに変え、黒龍のピアスをジェット付きの羽根に変える、それらをラナを発動し性能を上げる。

「力を借りるぞ、ラナ」


『うん!』


 ヴラーナの指がまた動く。


 ――幻術。


 俺には見えた。

 セイレーンの眼鏡を持つ俺だけが。


「おらぁ!!」

俺はセイレーンのマスクに触れ叫ぶ、言霊の術式を発動。

 青い波動が広がり、ヴラーナの幻術を“視覚の根本”から断ち切った。


 カリナはその一瞬の隙で、確実に前へ踏み込む。

 聖騎士の踏み込みは鋭く、美しかった。


 ヴラーナが微笑む。


「……へぇ。面白い子がいるじゃない」



 一方。

 ソーとレイヴンの戦い。


 岩盤が砕けるほどの衝突音が響く。


 二人とも、もう視界から消えていた。


 音だけがぶつかり合う。

 拳と剣、脚と刃、力と魔力。


 レイヴンが笑いながら怒鳴る。


「どうしたクソ王子ィ! そんなもんかァッ!」


「てめぇこそ、口だけじゃオレを殺せねぇぞォォ!」


「言うねぇクソ王子!!」


 ソーは聖剣ラナを使う。


 刃は蒼光を帯び、空気が震える。


「《神獣召喚・部分顕現》――虎爪!」


 蒼い霊的な“爪”が実体化する。


 レイヴンが受ける。


 完全に肉体強化だけで。


「ハッ!! そんな爪、オレの拳で折れるわッ!!!」


 粉々に砕けた霊爪が散った。


 ソーは一瞬後退し、魔剣オボロを逆手に持つ。


「これならどうだ――《朧纏い》ッ!」


 視界から消えた。


「!! 消え――」


 レイヴンは反応した。

 勘と経験のみで、紙一重の回避。


 刃が空を裂き、岩盤が切断される。


「おっそろしい剣だな……!

 でもいいねぇクソ王子! お前、最高だわ!!!」


 レイヴンの目が、完全に“狩人の目”に変わる。


「――本気出すぜ」


 レイヴンの肉体が一瞬で膨れ、圧縮される。

 まるで巨大な獣の筋肉が内側から爆発したように、脚力と腕力が跳ね上がった。


 次の瞬間レイヴンは――壁を蹴って空気を爆ぜさせ、ソーへ肉薄した。



 一方、ヴラーナVSカリナ。


 俺とカリナは二人で協力していた。


 ヴラーナは笑いながら、常に幻術かけてくる、かかった一瞬の隙に即死クラスの火力を撃ち込んでくる。


 カリナは一瞬だけ囚われる。

 その一瞬に――


「――死んで」


 ヒナワの超高威力弾丸を撃ってくる。


 高火力の火砕弾。

 当たれば跡形もなく吹き飛ぶ。


 俺は叫ぶ。


「おらおらぁ!!」


 幻術の根を断ち、カリナの視界が戻る。


「助かります!」


「任せろっ!」


 セイレーンのマスクと眼鏡――

 幻術の天敵は、俺のこの二つだ。


 カリナはすかさず反撃に転じる。


「はあッ!!」


 剣閃がヴラーナの頬を掠める。


「……ふふっ。やるじゃない」


 ヴラーナは微笑みながら後退した。


「でも幻術が消されるのはムカつくわねぇ」


「だったらなんだ?」


「邪魔よ♡」


 ヴラーナの瞳が深紅に染まる。

 空気が歪む。

 十重二十重の幻術が重なる――


「っ……お、らぁッ!!」


 俺はマスクに触れ、全力で術式を叩きつけた。

 喉が焼けるように痛い。

 視界が揺れる。

 だが――幻術は破られた。


 カリナはすかさず踏み込む!



 だが――戦場で最も激しいのは、やはりソーとレイヴンだ。


 レイヴンの拳が唸るたび、空気が爆ぜ、山々や木々が粉砕される。


 徐々に悪ソーの闘争本能が強くなり、笑っていた。


「お前……いいな。

 初めてかもなぁ、こんなに楽しい戦いは!」


「はッ、奇遇だな。

 俺も同じこと思ってたところだ……レイヴィー!」


「その名前、今だけは許すぜクソ王子!!!」


 二人が真正面からぶつかる。


 だが、ここでソーは一段階ギアを上げた。


 聖剣ラナが蒼光を放つ。


「《神王獣顕現・腕部強化》!!」


 両腕に白い獣の“王の腕”が宿る。

 魂が震えるほどの威圧。


 レイヴンの眉が跳ね上がる。


「はっ―マジかよ!! そんなもん隠してたのか!」


「使ったら死にかけるけどな。本気のお前と戦うためだ!!」


 その瞬間。


 ソーの姿が完全に消えた。


「!!?」


 レイヴンの記憶から、ソーの存在が一瞬だけ消滅する。

 オボロの第二能力《朧纏い》。


 次に見えたのは――神王獣の腕による拳。


「おらァァァ!!!」


 轟音。

 レイヴンの頬に拳が触れた――その瞬間。


「……ッ!?

 こいつ……!! ……思い出したァァァ!!!」


 レイヴンは――拳が触れる刹那の一瞬で、ソーの存在を“思い出し”、紙一重で回避した。


 その動きはもはや、常人では目視すら不可能。


「ははッ!! こんな戦い、初めてだクソ王子!!」


「俺もだ、レイヴィー!!!」


レイヴンの赤い瞳が、じり……と細められた。

ソーの肩から流れる血、激闘の余韻、そのすべてが狂気を誘うように彼の笑みを深くする。


「……さて。そろそろ 本気 で殺し合おうぜ、クソ王子」


「望むところだよ。クソレイヴィー」


互いに笑う。

ほぼ同時に、二人の靴底が地面を削った。


音が消え、世界が爆ぜる。



レイヴンの拳と脚は、もはや“拳”でも“脚”でもなかった。

強化された筋繊維の束が空気を破り、地形を抉り、爆音が遅れて耳を打つ。


ソーはそれを――

聖剣ラナと融合した腕で受ける。さらに

魔剣オボロの 朧纏い を足元へ展開、影のように揺らめいて回避し続けた。


赤と金と黒。

三つの光が絡み合うたび、大地が割れた。


「私に幻術使わせないとか、本当にあなたたちは勝手ねぇ」


背後ではヴラーナがカリナの聖光を捌きながら艶やかな笑みを浮かべる。


その幻術が発動するたび、俺は

セイレーンの眼鏡で術式の“ゆらぎ”を見抜き、

セイレーン・マスクの《呪言》で破壊する。


「――ッおらぁ!」


「解除した! カリナ!」


「感謝する!」


カリナの聖剣が光を裂く。

しかしヴラーナのステップは蛇のように妖艶で、寸前でかわす。



だが――決着は突然訪れた。


レイヴンの膝が沈む。

ソーの魔剣オボロが、レイヴンの腹に深々と突き刺さっている。


「……はっ。クソ油断したなぁ、俺」


レイヴンは笑った。

血を吐きながらも、笑う。


ソーが息を整えながら呟く。


「これで……終わりだ」


だが次の瞬間。


聖剣ラナを構えるソーの“動き”を、レイヴンは読んでいた。


「――読めるんだよ、そういうの」


レイヴンは、突き刺さったままのオボロをものともせず、体を捻り聖剣ラナもろとも破壊する勢いで渾身の一撃を放つ。

聖剣ラナでの斬撃は、赤黒い腕で弾かれた。


だが、それもソーの――おとり だった。


「本命は……こっちだ」


突き刺さったオボロの柄を、ソーが強く握る。

一気に回転しながら引き抜く――。


赤黒い血が、派手に散った。


レイヴンの身体が――

上下に、完全に二つに割れた。


「…………やっぱお前最高だぜ、クソ王子……」


皮肉でも、悪意でもなく。

戦士としての、純粋な歓喜の声だった。



その瞬間を、ヴラーナは“見て”しまった。


美しい赤目が、大きく見開かれる。


「……レイヴィー……?」


その声が震えた一瞬。

その一瞬だけ――彼女の幻術の膜がほんのわずかだけ薄れた。


俺の呪言がそれを削り取る。


「今だ!」


「……っ!」


カリナが迷わず踏み込む。

聖光を纏った一閃。


また幻術を発動して逃げようとするが、

俺が打ち消した、ヴラーナは諦めたように足を止め、立ち尽くす。


「はぁ…二対一なんてズルいじゃないの……」


その文句が言い切られる前に――

聖騎士カリナの剣は、迷いなく振り下ろされていた。


美しすぎる一閃。

ヴラーナの身体が二つに割れて、静かに崩れた。


「……レイヴィー…………」


最後だけ、優しい声だった。



戦いが終わった。


大地には血と焦げ跡と、砕けた岩の破片。

ヒナワ封印の遺跡だけが静かにそびえる。


ソーは深く息を吐き、腰に差した 聖剣ラナと魔剣オボロ をかすかに撫でる。


「……帰ろうか」


「えぇ、帰りましょうか。」


カリナが微笑む。


俺は落ちていたアーティファクト《ヒナワ》を拾い上げる。


こうして――

俺たち三人は、血煙の中からヒナワを回収し、


ウルシア王国への長い帰路へと、静かに歩き出した。


──────────────────


また2ヶ月の旅、、、

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