第三章5 1、2、3…11
数日後。
司祭館の玄関前。
夕暮れの光の中、外から帰ってきたリョンインを、見知らぬ男が足早に呼び止めた。
男は浅黒い肌に、逃げたくなるような笑顔を浮かべている。
「貴方、ここの神父ですよね。この写真の相手、アンタでしょ。コメントくれませんか」
男はにやついたまま紙を広げ、人を追い詰めるように半歩踏み出し、手にした紙を突き出した。
雑誌のゲラだった。見出しが赤く躍っていたが、文字が目を滑る。
載っていた写真は、ソジュンとリョンインの関係を捉えたものだった。いつから撮られていたのか、言い逃れのできない二人の親密さを表していた。
本文には二人の様子を詳細に描写し、あたかも読者の目の前で現場を目撃したかのように煽ってある。
頭の血が、指の先まですべて落ちたようで、指先の感覚が鈍る。
リョンインは、言葉を発するより先に踵を返し、扉を開けて、階段を駆け上がった。
背後で、異変に気付いたセバンが玄関で記者を制しながら声を荒げているのがかすかに聞こえた気がした。
自室に入り、扉を閉める。
足の感覚が無くて、机にぶつかり、体を支えられず膝まずく。
手が机の上のものに触れて、
そこからは、すべてが崩れ落ちるようだった。
手の中にあったのは、チェヨンから預かった小さな薬瓶。取り落とし、ガラスが床にぶつかって弾けた音が空気を裂いた。
薬と破片が床に散る。
リョンインはしばらく呆然と見つめ、それから無意識のまま破片の中の錠剤を拾い集めはじめた。
冷たい感触が指先に刺さる。
1、2、3…11。
数が胸に落ちたとき、不意に呼吸が乱れた。
――あぁ、良かった。彼女は10を乗り越えていたんだ。
ガラスなのか薬なのか区別もつかず、リョンインは一掴みに飲み込んだ。喉がきしむように動き、視界がすぐに滲みはじめる。意識がぼんやりとする中、あとは、誰かの叫ぶ声がドア越しに聞こえるだけだった。
「リョンイン! リョンイン! ドアを開けろ!」




