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F.C.E.U. 第4分隊 交戦後報告書(AAR)

 事案ID: INC-PURSUIT-WARSAW-01

 記録者: 第4分隊長 [編集済]

 日時: 大沈黙後

 件名: 対象者「サキ・アオイ」および「エレナ・ペトロヴァ」との接触および交戦について


 1. 任務概要

 クラスIV級ハザード指定対象者、サキ・アオイ及びエレナ・ペトロヴァの追跡と確保。旧ワルシャワセクターの潜伏情報に基づき作戦を展開。致死性兵器の使用は、対象からの有効な攻撃が確認された場合に限定されていた。


 2. 交戦経緯

【14:10 JST】

 対象二名を、錆びついた鉄の迷路のような巨大な廃操車場内で捕捉。我々は三名で包囲網を形成し、警告の上、無力化を試みた。


【14:12 JST】

 対象サキ・アオイは、こちらの警告に対し予測通り非致死的な威嚇射撃で応じた。だが、その射線や戦術選択には、かつての同僚に対する攻撃を躊躇う明らかな「ためらい」が滲んでいた。我々はこの予測された精神的な脆弱性を突き、側面からタナカ隊員を彼女の無力化へと向かわせた。


【14:13 JST】 - 特異事象発生

 タナカが対象アオイを確保する、まさにその直前、第二の対象、エレナ・ペトロヴァが動いた。ここからの記録映像は、信じがたい光景を映している。


 対象ペトロヴァの公的ファイルには「非戦闘員の民間人学者」とある。このデータは致命的に誤っていた。彼女はタナカの死角から音もなく接近すると、我々の動体予測AIですら反応が遅れるほどの速度で、彼に近接戦闘を仕掛けた。記録映像の分析によれば、彼女はわずか三秒未満でタナカの右上腕骨を粉砕し、頸椎への的確な打撃によってその意識を完全に奪っている。


【14:14 JST】

 さらにペトロヴァは、タナカから奪った拳銃で我々分隊員を直接狙うのではなく、狙撃ポイントであった給水塔の最も脆弱な支持構造部を正確に撃ち抜いた。倒壊を誘発し、大規模な混乱と煙幕を意図的に作り出したのだ。これはパニックによる偶発的な行動などではない。極めて高度な戦術的判断である。


【14:17 JST】

 対象二名はこの混乱に乗じて操車場の地下メンテナンス通路へと逃亡。二次被害を考慮し、追跡は断念した。


 3. 損害報告

 人的損害: タナカ隊員一名が重傷。戦闘能力を完全に喪失し、現在医療区画へ搬送中。

 装備損害: 狙撃ライフル一丁、及び観測機器一式が給水塔の倒壊により損失。


 4. 考察および脅威評価の更新

 対象サキ・アオイ: 脅威評価に変更なし。優秀な隊員だが、その情動的な部分は依然として戦術的な脆弱性である。


 対象エレナ・ペトロヴァ: 脅威評価を根本的に見直す必要がある。彼女は保護対象の民間人などではない。我々のいかなる戦闘教義をも遥かに上回る戦闘能力と戦術的判断力を有している。


 彼女の動きには一切の無駄もためらいもなかった。そして最も恐るべきは、その完全な冷静さだ。彼女は我々を敵として、あるいは人間としてすら見ていなかったように思う。まるでチェスの駒を盤上から静かに取り除くかのように、我々の隊員を「処理」した。


 我々はもはや学者とその信奉者を追っているのではない。未知の仕様を持つ第七人類時代の「兵器」と、その兵器がなぜか守ろうとしている「連れ」を追っているのだ。今後の全ての交戦規定は、この新しい現実に基づいて書き直されなければならない。


(報告書は、アーク中央司令部へ、最優先で転送された)

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