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第七人類絶滅報告書  作者: ななめハンバーグカルパス
第二部 文明復興庁
70/83

F.C.E.U. 緊急観察報告:H-住民の組織的・定型行動の発生について

 ログID: LOG-EMERG-DENVER-200412

 記録者: サキ・アオイ(第2分隊長)

 日時: 大沈黙後 7.0年

 場所: 旧デンバー市街 監視ポイントより


[分隊長による個人ログ記録開始]


 何年もの間、我々のH-住民に対する観察記録は単調なものだった。

 彼らの、目的のない穏やかな遊行。それは、この死んだ世界の一つの変わらない定数だった。

 だが、3ヶ月前、我々のパターン認識AIが、デンバーの個体群に僅かな変化を検出した。

 遊行は、もはやランダムではなかった。そこには「流れ」が生まれていた。


 まるで、巨大な磁石に引き寄せられる砂鉄のように。

 彼らは都市の中心、ただ一点を目指して、ゆっくりと、しかし、確実に集まり始めていた。


 今日、我々はその目的を自らの目で確認した。


 彼らは、物を集めている。

 シェルターを作るためではない。道具を作るためでもない。

 彼らが集めているのは、錆びた車のドア、砕けたガラス、折れた街灯、ねじれた鉄骨…。

 ただ、光を反射するもの。輝きを持つ、あらゆるものだ。


 そして、彼らは、それを積み上げている。

 都市の中央広場に、何かを建造しているのだ。

 それは、巨大で混沌としていて、非対称な、ひとつの尖塔。

 瓦礫と廃品でできた、新しい「塔」。


 彼らの動きは、統率が取れているが沈黙している。

 一人が、ガラスの破片を運んでくる。別の一人が、それを塔の壁面に、そっと、はめ込む。

 指導者はいない。命令する声もない。

 まるで、サンゴ礁が、自己組織化していく様を見ているようだ。

 中央集権的な意識を持たない、巨大な、創発的な、集合知性。


 私の最初の仮説は、これが何かの「巣」だというものだった。

 だが、この建造物に、屋根も、壁もない。いかなる雨風も防ぐことはできない。機能的には、全くの無意味だ。


 だが、リアムの分析で、本当の目的が判明した。

 これは、無意味なものなどではない。

 これは、楽器なのだ。

 様々な金属、ガラスの破片…それらは、住民たちが常に、無意識に発している、あの単調なハミングに、共鳴するように配置されている。一つ一つの瓦礫が、特定の周波数にチューニングされている。


 この、ガラクタの塔は…巨大な風鈴。

 いや、違う。

 アンテナだ。


 彼らはもはや、ただ、ハミングしているだけではない。

 この塔を使い、自らの集合的なハミングを、一つの強力な「和音」へと調律し、そして、それを空へ…宇宙へ向けて、放送している。


 マークス大将は、彼らの精神を消去することでその肉体を救ったと言った。

 彼は、間違っていた。

 彼は、精神を消去したのではない。ただ、再起動リブートさせただけなのだ。

 我々の知らない、全く新しい異質なオペレーティングシステムへと。


 ロゴス・ウイルスは、去った。

 だが、その後に訪れた完全な沈黙の中で、何かが生まれ、育ち始めている。


 彼らは、天に届くほどの、三番目のバベルの塔を築いている。

 瓦礫と囁きでできた塔を。


 だが彼らは、一体、誰に歌いかけている?

 それとも、こう、伝えようとしているのか?


「我々は、まだここにいる。そして、新しい何かになりつつある」と。


 …監視を続ける。

 我々は、新しい神の誕生を目撃しているのかもしれない。


[ログ記録終了]

新作の小説を投稿しました。


「ノボリト・チルドレン ―GHQ特殊研究報告書より―」

https://ncode.syosetu.com/n1999kv/

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