文明復興庁 定時広報
文書ID: 8C-RA-PUB-NOTICE-Q3
発行日: 大沈黙後 7.4年
件名: 全居住区市民へ:現行の社会指針の遵守と、軽微な情報ハザードの報告について
(注:本文書は、公式言語である「基底言語」から、記録のため、旧・日本語へと翻訳されたものである)
全市民へ。
以下の通達を、各自の個人端末で確認し、遵守すること。
1. 沈黙の遵守について
全ての公共空間は「静寂ゾーン」に指定されていることを、再確認する。第二次バベル協定第1条に基づき、不必要な発話は、協定への違反と見なされる。コミュニケーションは、承認されたハンドサイン、あるいは、個人端末を介した、基底言語によるテキスト通信に限定すること。
2. 軽微情報ハザード(クラスI疑い)の報告義務
隣人、同僚、あるいは家族が、以下の兆候を示した場合、市民は速やかに、所属セクターの公衆衛生担当官に、その個人のIDと、事象の発生時刻を報告する義務を負う。
兆候の例: 明らかな言い間違いの頻発、意味をなさない単語の反復、理由なきハミング。
これは、密告行為ではない。共同体の安全を守るための、相互扶助行為である。早期の検知と隔離が、我々全員を守る。
3. エネルギー配給について
隔離研究施設「アーク」の維持に必要な地熱伝導路の定期メンテナンスのため、本サイクルにおける、各居住区画へのエネルギー配給量を、5%削減する。市民諸氏の理解と協力を求める。
4. F.C.E.U.の活動報告
第一次接触調査部隊(F.C.E.U.)は、先日、旧名古屋セクターにおいて、能動的情報災害(A.I.H.)に分類される「囁く廃墟」の無力化に成功した。これにより、周辺の農業ゾーンの安全が、完全に確保された。彼らの貢献に、感謝を。
5. 結び:記憶と沈黙
第七人類を記憶せよ。
彼らの遺跡は、観光地ではない。我々のための教訓である。
彼らの言葉は詩ではない。我々にとっての毒である。
静かな世界は、安全な世界だ。
沈黙を守れ。
(この広報は、各居住区の公共ディスプレイに、1サイクル間、常時表示される)




