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第七人類絶滅報告書  作者: ななめハンバーグカルパス
第二部 文明復興庁
62/83

F.C.E.U. 第2分隊 交戦記録

 事案ID: INC-HOSTILE-NAGOYA_S3-20

 記録者: 分隊長 サキ・アオイ

 日時: 大沈黙後 7.0年

 任務: 旧名古屋第3セクター「サイレント・ゾーン」内における、敵性耐性者ホスタイル・レジスタントグループの排除。


[戦闘記録開始]


【22:07 JST】 - ゾーン進入

 分隊(4名)にて、対象のサイレント・ゾーンへ進入。

 ゾーン内のH-住民たちは、いつも通り我々の存在に気づくことなく、虚ろに遊行している。

 情報部によれば、少なくとも5名の「耐性者」が、このゾーンを拠点とし、H-住民を「家畜」のように扱い、物資を奪っているとのこと。

 今回の交戦規定は、極めて自由裁量の大きいものとなっている。端的に言えば、我々は狩りに来たのだ。


【22:15 JST】 - 接触、そして罠

 廃墟となったデパートの前に、孤立した人影を一人、熱源探知で確認。耐性者の一人と判断し、包囲隊形を組んで接近を開始。

 だが、目標まで50メートルを切った瞬間、状況は一変した。


 Saki (via text): 「待て!罠だ!リアム、音響!ケイト、視覚パターン!」


 Liam (via text): 「クソッ!周囲の地下街の換気口からだ!風切り音が共鳴してる!『カナリア』が振り切れるぞ!」


 Kate (via text): 「路面の濡れたマンホールが…!街灯の光を反射して明滅してる!あれもパターンだ!」


 次の瞬間、私のヘッドセットに、分隊員タクヤのプロトコル違反である、生々しい絶叫が響き渡った。


「やめろ、やめてくれ、頭の、中に…!」


 彼のHUDに表示されていたバイタルサインが、異常なスパイクを記録した直後、完全にフラットラインになる。認知崩壊。

 敵は、一発も撃っていなかった。彼らは、このゾーンそのものを、我々への引き金にしたのだ。


【22:20 JST】 - 交戦

 ビル2階の窓から、マズルフラッシュ。敵の攻撃が始まった。


 Saki (via text): 「敵、3時方向、ビル2階!制圧射撃!」


 Liam (via text): 「応戦する!こいつら第七人類の、自衛隊の装備だぞ!」


 敵は3名。自動小銃による、正確な射撃。我々は、廃車を盾に応戦するが、状況は悪い。

 我々は、ただの射撃戦をしているのではない。敵の銃弾と、そして、この空間を満たす、目に見えない「言葉の弾丸」の両方と、同時に戦っているのだ。


【22:28 JST】 - 対抗策

 このままでは、ジリ貧になる。私は、決断した。


 Saki (via text): 「リアム!ソニック・キャノンを、あの換気口群に向けろ!敵じゃない、音源を破壊しろ!周波数を、滅茶苦茶に乱せ!」


 リアムが、背負っていた指向性ソニック・キャノンを起動。可聴域を超えた、おぞましい不協和音が、換気口群に向けて放たれる。

 ビル街に響いていた、単調な死の「歌」が断末魔のようなノイズに変わる。

 その瞬間、敵の射撃が明らかに乱れた。彼らもまた、自らが仕掛けた罠の微妙な平衡の上に、立っていたのだ。


【22:35 JST】 - 制圧完了

 情報的優位を失った敵の動きは、素人同然だった。

 我々は、残りの敵性対象3名を、正確に、そして、迅速に無力化した。


 Saki (via text): 「全敵性対象を無力化。こちら、損害1。繰り返す、損害1。これより、遺体を回収し、帰投する」


【22:50 JST】 - 記録終了

 帰りのVTOLの中で、私は、今日の戦闘記録を反芻する。

 耐性者たちは、ロゴス・ウイルスを兵器として「利用」することを覚えた。

 彼らは、サイレント・ゾーンを、悲劇の場所ではなく、戦術的な「資産」として活用している。

 死んだ世界の幽霊を、自らの番犬へと調教したのだ。


 我々は今日、二つの敵と戦った。

 一つは、銃で撃つことができた。

 だが、もう一つは、この戦場そのものだった。そして、それは我々よりも、速く、賢く、学習している。


 これは、新しい戦争だ。

 そして、我々は、すでに負け始めているのかもしれない。

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