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第七人類絶滅報告書  作者: ななめハンバーグカルパス
第二部 文明復興庁
56/83

施設「アーク」セクターB 通信ログ(暗号化チャンネル)#2

 ログID: LOG-B-SECURE-203214

 通信者:


 ID: SAKI.A (サキ・アオイ)


 ID: ELENA.P (エレナ・ペトロヴァ)

 日付: 大沈黙後 6.0年

 場所: 施設「アーク」セクターB「図書館」


[通信ログ記録開始]


[17:38 JST] ELENA.P:

 サキ。例の「子守唄」のデータセット、第7次解析が完了した。パターンの中に、意図的な「意味の空白」が複数見つかったわ。ウイルスが自己を定義できない、論理的な真空地帯よ。


[17:39 JST] SAKI.A:

 …すごい。そんなものを、あの時代の母親が、たった一人で…。


[17:40 JST] ELENA.P:

 それは、我々が「愛」と呼ぶ、極めて高度な問題解決行動の産物でしょうね。重要なのは、その構造よ。この「真空」を応用すれば、あるいは…。


[17:42 JST] SAKI.A:

 博士。


[17:42 JST] SAKI.A:

 あなたは、綺麗です。


(ターミナルに、1分以上の長い空白。エレナ側の入力インジケータが表示されては、消えるのを繰り返している)


[17:45 JST] ELENA.P:

 …サキ。その言葉は、IBH分類基準によれば、クラスIIIの情報ハザードです。極めて高い、意味論的・感情的エネルギーを内包している。


[17:46 JST] SAKI.A:

 違います。

 これは私が、あなたに伝えたかった、ただ一つの、言葉です。ハザードではありません。


[17:47 JST] SAKI.A:

 あなたが何十年間も、たった一人で、この静かな墓所で死者たちの声なき声を聞き続けてきたことを、私は知っています。

 あなたが、老化しないのではなく、あのウイルスによって、永遠の「今」に、囚われていることも理解しています。

 あなたは遺物じゃない。あなたは生きて、ここにいる。

 私は…


[17:48 JST] ELENA.P:

 …ええ。

 理解しています。


[17:49 JST] ELENA.P:

 そして、それは…私が今まで解析した、どんなデータよりも、危険で、美しいパターンをしている。


[17:50 JST] ELENA.P:

 今日の作業は、ここまで。

 あなたの精神衛生状態を、モニタリングする必要があります。プロトコル・ガンマに従って。


[17:51 JST] SAKI.A:

 これは、私の問題です。博士には…。


[17:52 JST] ELENA.P:

 いいえ。

 これは、私たちの問題です。


[通信ログ記録終了]

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