「ニャウ太の尻」の巻
猫のニャウ太は、佐戸山家で可愛がられていた。
それこそ佐戸山家の息子よりも可愛いがられている、と言っても良いくらいだった。
しかし、ニャウ太には不満があった。
「実の息子のように可愛がられているが、吾輩には尻がない」
「あのやわらかい、座るための脂肪がついたプニプニの尻とやらが、吾輩にはない」
「息子のシンタ君と同等とは言えない」
「吾輩も尻が欲しい!」
とは言え、シンタ君の尻を盗むのは、遊び友だちとして忍びない。
「盗むなら、ダラダラゴロゴロして、特に何もしない『亭主』とか言う奴の尻だな」
「週に五、六日も、昼間はどこで何をしているのか分からない謎の大人だ」
「尻のひとつやふたつ、失くなっても困るまい。いつも寝転んでテレビを見ている。尻は必要あるまいて」
ニャウ太は、いつものようにリビングでうたた寝をしている「亭主」から、臀部のふくらみを二つ盗んだ。
盗んだ尻は、一旦、キャットタワーに隠し、タオルを被せた。
自分にすぐに尻が出来ては、怪しまれるかも知れないと思ったのだ。
「週に一個ずつ、二週間掛けて尻を作ろう」と言うのが、ニャウ太の計画だった。
佐戸山家の「亭主」が、
「俺に尻がない! いや、俺の尻がない! あれ? どっちだ?!」
と騒ぎ始めて一週間が過ぎ、
「そろそろ尻を半分、くっ付けよう」
と思ったニャウ太は、キャットタワーに登った。
おもむろにタオルを取るニャウ太。
だが、
「あっ、隠しておいた尻がないっ?!」
ニャウ太は大慌てで家中を探し始めた。
キャットタワーに隠したと思ったのは、
「吾輩の勘違いかも知れない」と思ったからだ。
ニャウ太は自分の猫頭を過信してはいなかった。
廊下でシンタ君とすれ違った。
シンタ君の尻のふくらみが四つになっている事には、気がつかなかった。
ニャウ太はそれほど慌てていたのである。
嗚呼、ニャウ太がシンタ君の四つ尻に気がつくのはいつの事であろうか?!
(横取りした尻どこよ)
よこどりしたしり、どこよ?!
お読みくださった方、ありがとうございます。
ゴールデンウィーク、いかがお過ごしでしょうか?
コチラは投稿作品を毎日考える日々です。
本日、昼からは「魔人ビキラ」のラス前の作品を投稿します。
明日は「魔人ビキラ」の第一部最終回になります。
「続・のほほん」は、まだまだ続くのでしょう?
ほなまた明日、「魔人ビキラ」と「続・のほほん」で。