「夜はまだか?」の巻
「よ、夜はまだか?」
うっかり、吸血樹に血を吸われたアバオンさんは、吸血鬼になってしまった。
「夜になったら、人間の血を吸わなきゃ!」
スマホで吸血鬼を調べたアバオンさんは、
(吸血鬼の性に従わないと)と、あたふたした。
アバオンさんは、生きにくいくらい生真面目だったのだ。
窓にはカーテンを引き、電灯を疎んで、消した。
「血を吸うなら、やっぱり若い女性かな? 吸血映画がそうだもんな」
アバオンさんは、「むさ苦しい」という形容がピッタリの、脂ぎった中年男性だった。
「キャーー! とか言われるんだろうな、やっぱり」
(ジャージ姿は止めよう)
と思い、防虫剤臭いスーツに着替えた。
夜にそなえ、ニンニク抜きのチャーハンを作り、お昼ご飯を食べた。
その後、念入りに歯を磨き、消臭スプレーを自分に吹き掛け、吸血される女性に失礼のないように、アバオンさんなりに気をくばった。
「あとは夜を待つだけだ」
と思われた。
「あっ、マントがない。吸血鬼なのに!」
とんだ失態に気がつき、慌ててマントを買いに出るアバオンさん。
うっかり血迷っていた。
(しまった! 遮光日傘を持っていたのに!)
吸血鬼アバオンは陽の光を浴び、灰と化して消えてゆく自分の体を見て、後悔した。
(あっ、よかった。隣のおばさんが、ぼくを見て驚いた顔をしている)
誰にも知られずに消え去るのは寂しいと思ったのだ。
(おばさん、よく見ると狼みたいな顔してる。へえ)
おばさんは、狼女であった。
仲良くなれる機会を永遠に失ったアバオンさんだった。
(血迷う夜待ち)
ちまよう、よまち!!
お読みくださった方、ありがとうございます?
誤投稿していた「魔人ビキラ」を消して、「続・のほほん」と入れ替えました。失礼しました。
「続・のほほん」は、マイペースで長く続けたいと思っています。
明日、明後日も「魔人ビキラ」を投稿します。
明後日で、第一部が終了です。
ほなまた、明日「魔人ビキラ」で。