「地植えの黒法師」の巻
皆さんは、多肉植物と言えば何を連想されるだろうか?
まず、サボテンだろうか?
サボテンによっては様々な花が咲き、綺麗である。
アロエも、クリームになったり飲み物になったり、多才な奴だ。
そしてその家の庭には、黒法師の株が幾つも植えられていた。
「他の多肉植物は鉢植えなのに、ボクらは広い地面に直接植えられている!」
「お日様の光を体一杯に受けられて、なんという幸せだろう!」
「雨の日も風の日も、バラさんと一緒に野晒しで鍛えられて、多幸感ハンパない!」
その庭には、バラやアジサイも植えられていた。
十年あまりは花を咲かせなかった黒法師だったが、十分に育った後は、毎年のように黄色い花を束にして咲かせた。
株が根こそぎ枯れる事はなかったが、枝が一本、また一本と枯れては数を減らしていった。
「頑張れ! 頑張れオレら!」
「恵まれたこの環境を生かして、ここに植えてくれた人間の役に立とう!」
黒法師たちはさして伸びない根を地面に張り、動けなかったので、腕立て伏せや腹筋で体を鍛えた。
もはや新種。ムキムキ法師であった。
そしてついに恩返しの機会がやって来た。
泥棒が家の者に見つかり、慌てて庭を横切って逃げようとしたのである。
「逃すかこの野郎!」
「日頃の鍛練の成果を見よ!」
木のような硬さはないはずの黒法師が、見事に泥棒の足を挫き、転倒させた。
「やったぜ!」
「怪しい奴を倒したぜ!」
泥棒は無事に警察に引き渡された。
「こんな多肉につまづいて転ぶなんて、随分間抜けな泥棒だなあ」
と、家の者たちは笑った。
しかし、バラもアジサイも雑草も、知っていたのである。
日頃の黒法師の努力を。
(役に立つ多肉や)
やくにたつたにくや!!
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ゴールデンウィークでも平常運転します。
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