表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回文オチで、ポン!「続・のほほん」  作者: にれ たつや
89/276

「有馬氏の決断」の巻

アルマジロが渾名(あだな)の有馬次郎氏は、引っ越し先の物件に満足していた。


南向きの大きな窓。

そして窓から見える海と、海に浮かぶ島々。

その家は高台にあった。

東西は、別の家に(はさ)まれていたが、さして問題ではなかった。


眼下には、街が海岸まで広がっている。


飲食店やパチンコ屋や本屋は、眼下の街にあった。

高台は閑静な住宅地だったのだ。


そして何より、売り出し価格が安かった。

訳アリ丸出しの値段だった。

「気に入りました。この家を買いたい!」

一階、二階も見て回って、設備、部屋割りも満足のゆくものだった。


「有馬様、有難う御座います。価格の安さは、もうお気づきかと思いますが、一点、問題が御座いまして……」

「はい。この玄関土間にある模様ですね? 全然構いませんよ」

と、変わらぬ笑顔で玄関に立つ有馬氏。


「ええ、模様が描いてあるのは奥の方ですから、普通の生活には問題ないかと。スペースが空いているのに、自転車など置けない難点がありますが」


「別にこんな模様、気にしませんよ」

と、(かが)んで魔法陣の隅を()でる有馬氏。

「ああっ、触ってはいけません有馬様っ!」


が、時すでに遅し、

「お呼びで御座いますか、無能なご主人様」

全身黒ずくめの衣服を着た、肌の色も漆黒(しっこく)という大男が、黒煙と共に現れた。


「おお、こんな仕掛けになってたんだ」

のけ反って大男を見上げる有馬氏。


「ああ、この世界は暑いな」

扇子(せんす)を取り出し、広げて顔を(あお)ぐ漆黒の巨人。

「強炭酸水が飲みたい。持って参れ、ご主人様よ」

発達した八重歯を見せて言う巨人。

「レモンとか、味の付いているのは駄目だぞ」


「し、ししし従って下さい有馬様」

有馬氏の後ろに隠れ、震えながら言う不動産屋。

「だ、大丈夫で御座います。みっつの願いを(かな)えてあげれば、とりあえずこの魔神は消えますから」


「この魔神? 他にも居るの?」

「魔法陣に触れなければ、出て来ませんから」


魔神のみっつの願いを叶えながら、この格安物件で暮らすか、新たな物件で長大なローンを組むか?!


有馬氏は土間の魔神と格安物件の価格に(まど)わされながら、強炭酸水を買うべく、遠くのコンビニに走るのだった。


「このまま逃げちまうか?!」 

          とも考えながら。




(惑う土間は魔導土間)

まどうどまは、まどうどま?!




お読みくださった方、ありがとうございます。

全世界の有馬次郎さん、ごめんなさい。

ふと気がついて、書いてしまいました。


明日は「魔人ビキラ」を午後5時前後に投稿します。

ビキラは、残り4話。

悔いのないように最後まで突っ走りたい(意味不明)。

ではまた明日、魔人ビキラ、で!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ