「勇者の剣」の巻
「お前か? 勇者の剣を神岩から抜いたと言うのは?」
鎧甲冑に身を包んだ大男たちが、転生勇者・岩沢の前に立ちふさがった。
あわよくば勇者の剣を盗み、岩沢に代わって勇者を名乗ろうと言う不届き千万な冒険者たちだった。
岩沢は、麻の服に麻のズボン。兜はなく、木の盾を持っている。
どう見ても駆け出しの冒険者だった。
ただ、腰にぶら下げている剣は、紛う事なき「勇者の剣」。
鞘から覇気が漏れ出ていた。
「うん。そうだよ」
小柄な岩沢は、大男たちを見上げて答えた。
「その勇者の剣とやら、見せてくれぬか?」
一番高価そうな甲冑を身に着けた大男が言った。
「うん。良いよ」
岩沢は無邪気で、人が良かった。
だから、勇者の剣を神岩から抜けたのかも知れない。
岩沢はそう言うと、勇者の剣を抜き、その拍子に、「見せてくれ」と言った男を上下真っ二つにした。
「あっ、ごめん。この剣、重くてさあ」
持ち直そうとして、また甲冑の大男を二人ばかり斬り倒す勇者・岩沢。
「重い上に、よく斬れてさあ」
よろめいて、街路樹も斬り倒す岩沢。
「しまった。計略を見抜かれていたか?!」
後の男たちは、大慌てで逃げ去った。
「勇者様、有難う御座います。あれらは街のならず者たちでした」
白髪頭の老人が、ひょっこり現れて礼を言った。
街の市長だった。
「ああ、そうなんだ。良かった、心を痛めないで済む」
そう言って、勇者の剣を鞘に収めようとして、礼を言ってくれた市長を斬り倒した。
扱いが難しいのだ、勇者の剣と言うものは。
「ああ、ごめん、ごめん。大丈夫?」
大沢は、頭を掻きながら謝った。
大丈夫な訳がなかった。
殺人鬼・岩沢の、始まりのエピソードである。
(災の岩沢)
わざわいの、いわざわ!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
全世界の岩沢さん、御免なさい。
さかさまにすると、なんて面白い苗字、いや、素敵な苗字なんだろうと思い、つい、書いてしまいました。
悪意も他意もありません。ご容赦ください。
下さらないと、また書きます。
↑念の為に言っておきますが、冗談です。
明日、金曜日は、「魔人ビキラ」の投稿曜日。
夕方の5時前後の投稿になるかと思います。
ではまた明日、魔人ビキラ、で。