「矛盾脱衣的救命行為」の巻
「山の天気は変わりやすい」
とは聞いていたが、初夏の低山で、なんで吹雪?!
しかし、吹雪になってしまったものは仕方がない。
ぼくはホワイトアウトの中、スマホの地図を頼りに下山していた。
「迷うはずがない。こんな低山で」
しかし迷ってしまったようだ。
そもそも下れていない。
「何故だ?! スマホのマップを見ているのに?!」
たぶん、東西南北の見方を間違っているのだろう。
「とにかく、服を脱がないようにしなければ」
矛盾脱衣、あるいは、逆説的脱衣と言うヤツだ。
低体温症のために暑い場所にいるような錯覚に陥り、衣服を脱いでしまう、と言うアレだ。
ぼくは幸いにも誰かが脱いだ衣服を見つけ、裸の上半身に着衣した。
サイズもピッタリだった。
「そうだ、かまくらを造ろう!」
雪の穴グラは暖かいのだ。
しかし、造っている途中で、「遭難だ」そうなんだ……と言う駄洒落を残して意識を失ってしまうぼく。
ふと気がつくと、温かいモノに挟まれていた。
フゴー、フゴー、というイビキが、かまくらの中に響いていた。
かまくらは、完成していた。
彼らが完成させてくれたのだろう。
身動きが取れない。しかし、この温かさのお陰で、ぼくは一命を取り留めたのだ。
食べるのは忍びない。
食べられるのは、なお忍びない。
彼らはもう、友だ。体を温め合い、助かった仲間なのだ。
ぼくは身じろぎもせず、彼らが目覚めるのを待った。
(枕元の友ら熊)
まくらもとの、ともら、くま!
お読みくださった方、ありがとうございます。
今日も投稿出来た。嬉しい。
明日の金曜日は、同じ回文オチ形式のショートショート
「魔人ビキラ」の投稿曜日。
お昼の12時前後に投稿予定です。
読んで頂けると、ありがたいです。
ほなまた明日、魔人ビキラ、で。