「方舟」の巻
「先生、ムカウ君はなぜ背中に羽根が生えていないんですか?」
幼稚園児の一人が、全体につるんとしたムカウ君を指さして言った。
(ついに来たか?!)
と先生は思った。
(落ち着け。いつかは来た瞬間だ。ここは私の采配に掛かっているっ!)
「ムカウ君はね、『にんげん』と言って、君たちとは違うんだよ」
先生の返事は直球だった。
「あっ、それで角がないんですね」
と、牛種のモーモーちゃんが言った。
「そうそう、今やそのう、ニンゲンは希少種だからね。皆んなで仲良くしよう」
「牙や尻尾がないのも、そう言うコトだったんですね」
と、神獣種のビャッコ君。
「こいつの仲間が、地上を目茶苦茶にしたんじゃないんですか?」
厳しい質問をしたのは、鳥獣種のフェニックス君だ。
「違う! それは断じて違うよ、フェニックス君」
先生は、電子眼を瞬かせ、金属の腕を振り回して言った。
それは事実だった。
『ロボの方舟』に、人間は選ばれなかったのだ。
二度も三度も地上を破壊されては、たまらないからである。
とりあえず、類人猿を舟に乗せ、ニンゲンと偽っていた。
いずれ小賢しく進化すると、ロボットたちは考えていた。
そうなれば、人間と呼べよう。
とは言え、今は『人間の卵』だ。
(時間はある。進化しろ、類人猿。人間め、今度は我々がお前たちを支配する番なのだ!)
暴風雨の中、ロボの方舟はドンブラコドンブラコと、大海原を漂い続けた。
水が地上から完全に無くなるのには、まだまだ時間がかかる第四惑星、火星だった。
そして、第三惑星地球で、同じことが繰り返されるのには、さらに長い長い時間を要した。
(類人猿園児居る)
るいじんえんえんじ、いる!
明日、日曜日(1月21日)は、
「魔人ビキラ」本編を、昼の12時前後に投稿予定。
「在庫がなくなってきたぞ、さあどうする?!」の巻。あらため、「ププンハン現わる」の巻。
月曜、火曜、木曜、土曜は「続・のほほん」を、朝の7時前後に投稿予定です。
水曜、金曜、日曜は「魔人ビキラ」系を、昼の12時前後に投稿予定です。
第一部「のほほん」は、同サイトにて、111話で完結済みです。
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