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「買い物帰り」の巻。ミチコ&タカシ編
「チンチロリン、チンチロリン」
路傍の虫の鳴き声を聞いて、買い物帰りのミチコさんが、
「あら、マツムシが鳴いているわ」
と、はずんだ声を出した。
「もう12月が近いもんなあ、珍しいかも」
と、荷物持ちのタカシくん。
「残念ねえ、マツムシももう終わりだなんて」
と、草むらを探し始める若妻のミチコさん。
「生で食べちゃ駄目よ、タカシさん。寄生虫がいるから」
「あっ、あの、帰りを急ごうよ」
少し慌てる夫のタカシくん。
「むう。今年最後のマツムシの唐揚げだよ、タカシさん」
「もう、一杯食べたから、また来年」
と、タカシくん。
「チンチロリン、チンチロリン」
「美味しそうな声で鳴くよねえ、マツムシ……」
ミチコさんは、名残り惜しそうにつぶやいた。
(マツムシ惜しむ妻)
まつむし、おしむつま!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日は、「続・のほほん」を夕方の5時前後に投稿予定です。
同じ回文オチ形式のショートショート、
回文妖術師と古書の物語「魔人ビキラ」は、
金曜日、土曜日に投稿予定です。
ほなまた明日、続・のほほん、で。




