「仮の果て」の巻
「ああ、いらっしゃい。ここが世界の果てだよ」
街の四つ角で、大荷物を尻に敷いた冒険者が言った。
「何を言っている。青空はまだ続いておる。街並みは続いておる」
杖をついてやって来た白髪の老人が言った。
「禿げ山が、街の向こうに見えておるではないか」
老人は人通りのない四つ角を横切って、先に進んだ。
そして、空間にぶつかった。
「な、なんだこれは?」
「絵だよ。そこから先の街並みも、青空も、遥かな禿げ山も皆んな絵なんだよ」
「うっ。この手ざわり、この音。板に描かれておるのか?」
「左に行っても右に行っても、ずーーっと板に描かれた絵が続いているだけだったぜ」
「この絵は天まで届いておるのか?」
「たぶんそうだ」
「誰が一体、こんな馬鹿馬鹿しい物を」
「世界の果てまで創造するのが面倒くさくなった神様だろうさ」
老人は絵に描かれた空間を押すが、もちろんびくともしない。
「しかし木ならば、水分に弱いのではないか?」
老人は行き止まりの空間に立ち小便した。
「おいおい、何やってんだよ」
と言いながら、冒険者も立ち小便をした。
来る日も来る日も立ち小便をした。
そしてついに、絵の空間が腐って穴が空いた。
「ふん。石の上にも三年じゃ。努力に勝る才能なし、とはこの事じゃ」
「なんの努力だよ。虚仮の一念、ってヤツだろうが」
老人と冒険者は腹這いになって、空間に空いた小便臭い穴を潜った。
本当の世界の果てを見るために。
(大層な嘘板)たいそうな、うそいた!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日、木曜日もたぶん「続・のほほん」を投稿します。
今日、夕方5時前後にも、「続・のほほん」を投稿します。
ほなまた、夕方に「続・のほほん」で。
同じ回文オチのショートショート形式で、
回文妖術師と古書の物語「魔人ビキラ」
という話が、第一部を終了しております。
よかったら、読んでみて下さい。