「繁盛の秘訣」の巻
伊勢屋はタコ焼き屋であった。
「今日はタコ焼きに生姜を入れよ。生姜入りタコ焼きが売れるであろう」
店舗の指示に、
「承知しました親方」
「仰せのままに」
と頭を下げて従う店長および店員たち。
来店する客に、積極的に声を掛ける店員たち。
「おう、今日はショウガ入りが抜群の出来だ」
声を張り上げる店長。
「どうでがす? 今日は生姜タコ焼きが大人気ですぜ」
「どうですか、この艶、この形。今日は生姜タコ焼きで決まりです」
「家族のお土産に生姜タコ焼き。自分へのお土産にも生姜タコ焼き!」
老若男女の店員たちも声を出す。
「ショウガねえなあ」
お客も使い古された駄洒落を得意げに発して、生姜タコ焼きを求めた。
そして店じまいの時間となり、
「どうだ。今日も良く売れたろう」
と自慢げに言う店舗。
「ありがとうございます、店舗様」
天井や壁に向かって礼の言葉を述べる店員たち。
「明日は、そうさな、ピーナッツ入りタコ焼きが大売れするだろう。私の野性の勘がそう言っている」
「ピーナッツ。ピーナッツは在庫がないぞ」
青ざめる店長。
「大変だ。家への帰り道にスーパーがあります。そこで買います、店長」
「いや、ワシも買うぞ、明日の大売りのために」
「わたしも」
「ぼくも」
と、口々に言う店員たち。
明日も伊勢屋は繁盛かも知れない。
自分たちの企業努力の結果だとは思わない、謙虚な人間たちであった。
(野性の勘天下の伊勢屋)
やせいのかん。てんかのいせや
お読みくださった方、ありがとうございます。
在庫が出来た、明日も、のほほんを投稿するぞ!
明後日の金曜日は、
回文妖術師と古書の物語「魔人ビキラ」を、
夕方の5時前後に投稿投稿予定。
ほなまた明日、続・のほほん、で。