「割れナベに綴じブタ」の巻。
「なんだ今の爆発音はっ?!」
支配人の馬人が厨房に駆け込んだ。
「皆んな、無事かっ?!」
「大鍋が煮込みすぎで吹き飛びました」
と、料理人の鹿人。
「料理長のトンソクさんが大怪我をっ!」
ドジな豚人だった。
「他に怪我人はっ!?」
「大鍋が割れてしまいました!」
「何っ、あの我がホテル自慢の大鍋がっ?!」
ひんひん鳴いて、のけ反る支配人馬人。
「蓋はっ? 蓋はどうなった?!」
「綴じ蓋は無事です!」
鹿人がシカと申し立てる。
「そうか、フタは無事か。何よりだっ!」
馬人は馬胸を撫でおろした。
「えっ? 救急車を呼ぶ? なぜ? フタが無事なのに」
と、馬な事を言う馬人。
「馬鹿な事を言わないで下さい、支配人。トンソクさんが大怪我をしたんですよ!」
「ああ、忘れていた。綴じ蓋が無事だったもんだから」
料理長の代わりは幾らでも居るが、綴じ蓋の代わりはないホテルだった。
「でも、本当に怪我人がトンソクさんで良かったです」
鹿人は鹿な事を言った。
「綴じ蓋が無事で、何よりだと思います」
「綴じ蓋は死守しました、支配人殿」
虫の息で、トンソク料理長が言った。
(綴じ蓋無事と)
とじぶた、ぶじと!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
日曜日の今晩、出来れば「魔人ビキラ」の投稿をしたいと思っています。
月曜日の明日はまた、「続・のほほん」を投稿します。
ほなまた今晩、魔人ビキラ、で。