「Xが飛ぶ!」の巻
「ぐあーー!」
ゴミの収集日を狙い、袋を破って手に入れた食べ物を横取りされ、さらに蹴られて舞い落ちるカラスの寛次郎。
「うっ。例の怪鳥Xが、とうとうこの横丁にも来たんじゃないか?」
寛次郎の墜落を見て、空を舞うトンビの飛座右衛門がつぶやく。
「なあに、オレらは食い物を持ってねえ、大丈夫さ」
一緒に飛ぶ長助が言った。
五、六羽のトンビが輪を描いて、ピーヒョロ鳴いている。
と、長助が、
「ぎゃっ!」
と叫んで落下してゆく。
「な、なんだ? Xかっ?!」
輪を解いて逃げ出すトンビたち。
「食い物は咥えてねェのに、なぜだっ」
「痛え。羽根だっ。Xの目的は羽根だあっ」
と、叫びつつ墜落をしてゆくトンビ。またトンビ。
ここはスーパーマーケットの軒下。
ひとつの鳥の巣があった。
「おお、X子や、すまないねえ。こんなに沢山の羽根を。温かくて助かるよ」
「今度は食べ物を取ってくるから、無理をしないでね。お父さん、お母さん」
体の具合の悪い両親のため、巣作りのため、日々の糧のため、今日もX子は、トンビを、カラスを、モズを、アオサギを襲うのだった。
「うわあ、Xが来たっ!」
「ひい、Xにアオムシを取られたっ!」
「うわあ、オレの羽根が羽根が羽根がっ、河童ハゲにむしり取られてゆくうっ!」
今日もツバクロ市の上空は大騒ぎであった。
(子燕X子)
こつばめ、ばつこ!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
在庫が出来たので、投稿休日曜日と言いながら投稿。
夕方の五時前後にも投稿予定。
そして無くなる在庫。
ええねん、今の充足感が大事やねん!
ほなまた明日、「魔人ビキラ」で!
回文ショートショート童話「のほほん」全111話。
世紀末を歩く者「風骨仙人の旅路」全4話。
漂流者の職業なのか?「異物狩り」全4話。
が完結しています。よかったら、読んでみて下さい。