「柳から垂れ下がるお婆さん」の巻
お堀の縁の柳から、お婆さんが垂れ下がっていた。
「こらあ、ガキども、何をしておるかっ!」
作業服のおじさんが叫んだ。
柳から垂れ下がるお婆さんを、数名の若者が叩いていたのだ。
「何言ってるんだ、オッサン。こいつ妖怪だぜ」
「堀の柳から垂れ下がるって、妖怪以外のナニモノでもないぜ」
などと言い返しす若者たち。
「妖怪でもなんでも、お年寄りをいじめてはならーーん!」
「いじめじゃないぜ」
「妖怪退治だぜ」
「ひと口に妖怪と言っても、良い妖怪もあるだろうっ?!」
「キタロウってのは駄目だぜ、オッサン」
「あれ、漫画だから」
「漫画のキャラクターだから」
「その柳から垂れ下がってるお婆さんが、悪い妖怪だという証拠があるのかっ?!」
「そ、それはなかったけどよ」
「柳から垂れ下がる婆あって、怖いじゃねえか」
「ワシは怖くないっ!」
ズカズカと、柳から垂れ下がるお婆さんに近づくおじさん。
「見れば、柳に取り憑かれた可哀想なお婆さんではないかっ!」
と言って、だらりと柳から垂れ下がるお婆さんの隣に立つおじさん。
「この優しそうに垂れ下がるお婆さんのどこが怖いのか、お前たち!」
その時、妖怪垂れ下がり婆は大きく体を振って暴れ出し、おじさんわ掴むと、お堀に放り投げた。
「うあーー!」
と言うおじさんの悲鳴と、ドブン! というおじさん飛び込む水の音を聞いて、
「わあ!」と叫んて逃げ出す若者たち。
柳から垂れ下がるお婆さんは、いかに優しそうに見えても迂闊に近づいてはならないという、尊い教訓であった。
(暴れ出した垂れ婆)
あばれだした、しだればあ!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
投稿は休む予定でしたが、予想外に在庫が出来たので、そのひとつを我慢出来ずに書きました。
明日、金曜日は、回文妖術師と古書の物語「魔人ビキラ」を
お昼の12時前後に投稿予定です。
ほなまた明日、「魔人ビキラ」で。