「泉同好会」の巻
空き地に穴を掘る「泉同好会」の老若男女。
「こうして穴を掘る。しかし、このままでは、単なる地面に出来た穴じゃ」
と、泉同好会の会長、コイズミ氏。
「落とし穴とも解釈できますね」
と、新入りのオオイズミ君。
「そこで水を入れるのじゃ」
と、バケツに入れてきた水を、掘った穴に入れるコイズミ氏。
「さすれば『泉』となりますのじゃ」
「どうだ」と言わんばかりの顔で、会員たちを見回すコイズミ氏。
「しかしこのままでは、単なる水溜まりではありませんか?」
オオイズミ君が疑問を呈した。
「い、今、水を入れたばかりで濁っていますが、やがて澄んで泉となるのです」
オオイズミ君の発言に戸惑いながらも、今まで通りの主張をするコイズミ氏。
「いや、水溜まりの間違いでしょう」
と、真実を突くオオイズミ君。
「なんなんだ、新入り君、さっきから!」
会長としての面子を潰されて、コイズミ氏が怒った。
「ほら、北海道に『青い池』があるでしょう? コバルトブルーの」
と、オオイズミ君。
「おお。『白金青い池』!」
会員の一人が大きな声を出した。
「やはりアレくらいでないと、いけないと思うんです」
と、ポケットに手を入れるオオイズミ君。
「たかが水溜まりが、どうやったら『白金青い池』になると言うのだっ!」
コイズミ氏は、ガッツリ墓穴を掘りながら喚いた。
「ぼくだって、泉同好会に入会するために、色々と考えて来たんですよ」
ポケットから絵の具のチューブを取り出すオオイズミくん。
その絵の具の色は、水色だった。
「この空き地の泉は、今から『青の泉』と名付けます」
手に持った水色のチューブを掲げるオオイズミ君。
「ではこれより、名付けの儀式を執り行います。」
オオイズミ君は蓋を取ると、チューブを少し押さえ水色の絵の具をちょっぴり、水溜まりに落とした。
掻き混ぜるのは、コイズミ会長が行った。
(水入り泉) みずいりいずみ!!
(水色泉) みずいろいずみ!!
それからというもの、風の日も、霧の日も、オオイズミ君は「青の泉」を枯らさぬため、水色の水を入れたバケツを持って、空き地に通い続けたという話である。
お読みくださった方、ありがとうございます。
「泉が湧く」と言う言葉がありますが、この際、忘れてあげましょう。
ではまた明日、「ビキラ外伝」で。
 




