「絶世の珍味」の巻
某知事が、突然に某村を訪れて、
「山海の珍味を食べたい」と申された。
対応すべく、村長の家に集まる村の幹部たち。
「日本三大珍味と言えば、『ウニ』と『コノワタ』と『カラスミ』ですな」
と、副村長さんが言った。
「ウニならなんとかなるんじゃありませんか、ウチは漁村なんだから」
と、村の金庫番さんが応じた。
「『生ウニ』のことじゃないよ。ウニの卵巣を塩漬けにした物じゃ」
最長老さんが説明した。
「大丈夫。あります」
と、副村長さん。
「村長さんとこ、つまり此処に」
「う、うん」
うなずくしかない村長さんだった。
さらに金庫番さんは、
「コノワタとは?」と問うた。
「ナマコの内臓の塩辛です。これは副村長の家の縁の下に」
と言ったのは、書記長だった。
「カラスミとは?」
金庫番さんは、残る疑問を口にした。
「ボラの卵巣を塩漬けにして乾燥させた物ですが、これは最長老の家の金庫の中に」
後の復讐を恐れず、書記長さんが答えた。
「世界三大珍味もやった方が良いんじゃないか?」
ヤケクソ気味に言い出す村長さん。
「トリュフと、フォアグラと、キャビアですな」
こちらは、スラスラと言う金庫番さん。
「トリュフは、地下で育つ、独特な香りを放つキノコだっけ?」
と、副村長さん。
「フォアグラは、肥大させたガチョウの肝臓だっけ?」
と、最長老さん。
「キャビアは、チョウザメの卵の塩漬けだっけ?」
と、書記長さん。
「恥ずかしながら、全種類、ウチの屋根裏に隠してあります」
正直にゲロする金庫番さん。
「村長さん。食べると不老不死になると言う、人魚の肉も持っておろうが?」
と、最長老さん。
「ううむ、その通り」
唸って肯定する村長さん。
「しかし不老不死と言えば、最長老様の家宝は、孫悟空が食べ残したという桃の実じゃありませんか」
「家宝と言えば、我が家の家宝は、食べれば千年 祟られるという鵺のヘソのゴマです」
書記長さんが、ゲロした。
「家宝つながりで、これも出しましょう」
「色々と出たな。しかしどれとどれを食卓に出すかな?」
首をひねる村長さん。
「なに、皆んな少しずつ混ぜて、ミキサーでミンチにしてしまえば良いのじゃ」
最長老が断言した。
「おお、絶案。きっと絶品が出来るに違いない」
村長さんは手を打って喜んだ。
「うむ。皆んな食わせりゃ、知事とて文句はあるまい」
副村長は深くうなずいた。
その案は、出席者全員一致で可決の運びとなった。
ただ、ミキサーだけは、自分の身体でそんな訳の分からない伝承物を混ぜ合わされるのは、大いに遺憾に思っていた。
(山海の珍味、ミンチの遺憾さ)
さんかいのちんみ、みんちのいかんさ!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
「続・のほほん」これにて在庫切れであります。
「続・のほほん」は完結とはせず、作品? が出来たらまた投稿する場として、残します。
不定期投稿になりますが、また良かったら覗いてやって下さい。
また、「蛮行の雨」は、週に四回、木曜日〜日曜日にかけて投稿は続きます。しばらくは大丈夫です。
まだ魔王ロピュコロスを倒していないし。
「新・ビキラ外伝」も、週に三回、月曜日〜水曜日にかけて、投稿します。はずです。
では、明日から「蛮行の雨」で、お楽しみ頂けたらさいわいです。