「頑張る八百屋」の巻。その他
「頑張る八百屋」の巻
スーパーの隣で営業を続けている小さな八百屋を、冷やかし気分で訪れた男は思わず、
「おお。青キャベツ、赤キャベツ、黄キャベツ!」
と、声を上げた。
「はい。私どもの畑で作っている青キャベツ、赤キャベツ、黄カベツで御座います」
と、一部噛んで答える八百屋の店主。
「そしてこちらは、黒ナス、赤ナス、黄ナス、金ナス、銀ナス?!」
「はい。こちらも私どもの畑で作った成すがままの、ナスで御座います」
「彩りが鮮やかですねえ」
「一子相伝。代々、色野菜を受け継ぎ守ってまいりました」
「こういう特産品で、隣のスーパーと対抗しているんですね?」
「いえ。代々続いてきた八百屋を、自分の代で潰したくないもので、意地を張っているだけです」
「赤ダイコン、黄ダイコン、黒ダイコンも見事ですねえ」
「赤ダイコンは、赤カブラと同じ味がします。黒ダイコンは、肥料にイカスミを混ぜて御座います」
と、答える店主。
「黄ダイコンは?」
「お漬け物で御座います」
男は、無難な所で、漬け物の黄ダイコンを買った。
(偉大だ! 八百屋代々)
いだいだ! やおやだいだい!!
*** *** ***
「温水プール」の巻
温水プールである。
温水プールと言えば、水泳である。
遠泳が趣味のウガタさんは、
「いつまでも泳いでいられる」
と評判の市民プールにやって来た。
「ほほう。なかなかに長い。そして広い。たかが市民プールにしては面白い奴」
ザンブ! とばかりにプールに飛び込むウガタさん。
やがて、
「むむっ? 対岸はまだか?」
と、驚くウガタさん。
「なんのこれしき!」
ザブザブと泳ぎ続けるウガタさん。
そして河童の川流れ。
ウガタさんは溺れるまで泳ぎ続けたのであった。
市民プールで救助され、遠泳の達人ウガタさんは呻いた。
「どうなっているんだ、このプールは……」
「見たまんまですよ、お客さん」
職員はプールを指して言った。
(プールが、ループ)
ぷーるが、るーぷ!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
在庫が残り一編となりました。
明日、投稿します。
その後は、話がフッと出来たら投稿する、不定期投稿になるかと思います。
閉じる(完結する)のは止めておきます。
発表の場は、残しておきたいので。