「モノノケ連合軍」の巻
鎮守の杜を荒らす人間どもを倒すために、杜に棲むモノノケたちは、一致団結した。
人間の悪党どもは狡賢く、モノノケ軍は苦戦したが、なんとか追い払う事に成功した。
しかし、モノノケ連合軍も無傷では済まなかった。
化け鴉のカア介、化け狐のヨウ吉、化け狸のポコ太などが大きく傷つき、仲間の手厚い治療を受けていた。
「ヨウ吉さん、しっかりして!」
包帯だらけのヨウ吉の手を握って、励ます妖狐のキタ子さん。
「だ、大丈夫さ、キタ子さん。あなたを残して死ぬものか!」
握りしめられた手の痛みに耐え、空元気を見せるヨウ吉。
「ああ、ヨウ吉さん!」
嬉しくてさらに握る手にチカラを込めるキタ子さん。
「うひょーー!」
痛さと嬉しさで叫び声を上げるヨウ吉。
そんな色恋沙汰は横に捨て置くとして、丸々と太った化け狸のポコ太の傷は深く、誰の目にも先が長くないように思われた。
「しっかりするのよ、ポコ太さん!」
ろくろ首のニョロ子さんが懸命に看護している。
ポコ太は全身、包帯だらけである。
「大丈夫、きっと良くなるから」
雪女のユキ子さんも、甲斐甲斐しく手当てしている。
「あのう、ニョロ子さん、ユキ子さん……」
「何かしらポコ太さん」
身を乗り出すニョロ子さん。
「何でも言って!」
顔を近づけて、ポコ太の香りを嗅ぐユキ子さん。
「ぼくの包帯が、ミソ味タヌキ汁風味のような気が……」
「ななな何を言ってるのポコ太さん。気のせいよ、気のせい!」
と言って目を逸らすニョロ子さん。
「そ、そうよ、ちょっと味付けが濃いのも、あっちで鍋が煮られているのも気のせいだから」
ユキ子さんがそう言って、ポコ太を安心させようとした。
「だからポコ太さん、祝勝会の料理の事もあるし、後はぐっすりと眠って下さいな」
ニョロ子さんはトドメを刺すように言った。
(止血時、味付けし)
しけつじ、あじつけし!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
今回は、「魔人ビキラ」本編の「前書き」に書いたショートショートを加筆修正したものです。
「前書きは読まない(読まれない)」と言う話を聞いたので、書き直して投稿している所です。
ネタが同じなので、「前書き」のショートショートは消しています。
ではまた明日。