「ズワイガニも考える」の巻
大きなズワイガニが獲れた。
大きなオスは脚を広げると、七十センチになる。
しかし、タカアシガニなどは、脚を広げると、三メートルにもなる。
そしてそのズワイガニは、脚を広げて測ると、四メートルもあった。
「もう、ズワイガニじゃねえぜ、コイツは」
「デカすぎて売り物にならねえな、こりゃ」
漁師たちは話し合った。
「水族館に寄付するか?」
「でも、一メートルくらいあるロブスターが獲れたので、水族館に寄付したら……」
「あっ、そうだ! エサを食べなくて、餓死しちゃったんだ」
「百年は生きてきた、とか言われてたなあ」
「じゃあ、食っちまうか。オレらで」
「でも、茹でちゃいけないらしいぞ」
「なに言ってんだゲンゾウ。普通、茹でて食うだろ」
「ロブスターが苦痛を感じるから、駄目なんだとさ」
「えええ?! なんだそりゃ」
「野蛮で低俗な食べ方なんですと」
「そう言えば、『タコは知的な生物』だから、と養殖を禁止した国があったな?」
「アメリカだよ。ワシントン州と、カリフォルニア州が禁止したらしい」
「ああもう、外国はどうでもいい! 茹でるのが駄目なら焼いて食うぞ」
「うんうん。焼きガニなら良かろう」
と言う展開から、脚をむしり取られ、焼かれて喰われる超巨大ズワイガニ。
「うお。これはまた……」
「苦っ!」
「苦い! こりゃ食えねえ!」
大きな足の肉にかぶりつき、呻き声を上げる漁師たち。
巨大ズワイガニは、こうしてロクに食べられる事なく、海に戻された。
そしてここは、ズワイガニたちの街。
「どうだった、タロウ。ズワイガニ零三号は?」
「駄目だった。やっぱり人間に捕まった。大きいだけじゃ逃げられない」
「よく助かったなあ、タロウ」
「甲羅の中に隠れてたんだよ」
そう言って、爪先で甲羅を掻くタロウガニ。
「不味いって、海に捨てられたんで助かった」
「そりゃ、零三号は食い物じゃないから。ありゃ、ロボットだもの」
「そうか! ぼくたちの肉を不味くすれば、そのうち人間に食べられなくなるかも」
発明家のズワイガニ、タロウは思案するのだった。
(苦いわ、ズワイガニ)
にがいわ、ずわいがに!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
また明日、「続・のほほん」か、「新・ビキラ外伝」で。




