「カムダイさんの価値感」の巻
「今、巷でメダカが流行っているのは、ご存知ですかな?」
夕暮れの河原で、行きずりの男に問われるカムダイさん。
「ええ。そういう噂は、聞きます」
と、曖昧な知識で曖昧に答えるカムダイさん。
「メダカは改良がしやすく、キラキラしたり、メラメラしたりするのです」
ロングコートの男は、そう言って、腰に下げていたバッグから、水の入った小瓶を取り出した。
瓶の中には、メダカが入っていた。
「ほーーら、赤いメダカですよ。珍しいでしょう?」
と、小瓶を振る男。
「えっ? そんなに赤くてメダカなんですか? 熱帯魚じゃないんですか?!」
「ヒレも大きくて、熱帯魚のようなメダカです」
「へえーー、綺麗ですねえ」
小瓶の中の赤メダカに見入るカムダイさん。
落陽が近かった。
売り物のメダカは、小瓶の中でストレスが溜まって弱っている。
早く片付けたいメダカ売りの男だった。
「もう今日は、店仕舞いをしたく思いますので、このメダカはあなたに差し上げましょう」
美しいが、希少価値のないメダカを示して言うメダカ売り。
「ええっ? そんな綺麗なメダカを?!」
メダカは希少価値で値段が決まる事を知らないカムダイさんは驚いた。
「申し訳なく思って下さるのなら、あなたが持っている魚と、物々交換といきませんか?」
「えっ? こんな平凡な魚と、その美しいメダカを?! いいんですか?」
「特別に。この値千金のジョウオウヒオウギと、交換して差し上げましょう」
「ありがとうございます!」
初めて見る赤いメダカに魅入られたカムダイさんは、喜んだ。
そして、目の前の河で捕らえた、なんでもない巨大な鮭を差し出した。
(鮭、渡す戯けさ)
さけ、わたすたわけさ!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
人の価値は人それぞれ。な、お話でした。
赤いメダカは、友人が飼っていて、やはり普通のメダカとは違うので、面白かったです。
明日、木曜日から日曜日まで、「蛮行の雨」を投稿する予定です。
ではまた、明日。




